データサイエンスエージェント(Google Cloud)とClaude Codeを比較してみた

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G-gen のバロキです。当記事では、Anthropic の Claude Code と Google Cloud のデータサイエンスエージェントという 2 つの AI ツールに、同一のデータセットと指示を与えて比較しました。自動生成されるデータ分析ノートブックに、どのような違いが生まれるかを検証しました。

概要

はじめに

「データを渡すと、AI が分析ノートブックを生成してくれる」という体験が、一般的になりつつあります。Google Cloud のデータサイエンスエージェントや、Claude Code をはじめとする大規模言語モデル(Large Language Model、以下、LLM)ベースのエージェントツールは、いずれもデータ分析の自動化を可能にします。

しかし実際に検証してみると、同じデータセットと同じ指示を与えても、ツールによって出力されるノートブックに違いがあるケースがあります。当記事では、両者の成果物を並べて比較し、その差がどこから生まれるのかを読み解きます。

結論を先に述べると、2 つのツールに優劣はなく、想定されている用途やユーザー層が異なります。なお、当記事の内容は、検証を行った2026年5月現在の仕様に基づいています。

データサイエンスエージェントとは

データサイエンスエージェントは、Google Cloud の Colab Enterprise に組み込まれた、Gemini をベースとするデータ分析エージェントです。タスクをサブタスクに分解し、ステップごとに思考プロセスを示しながら処理を進める点が特徴です。BigQuery テーブルや CSV ファイルを入力に、自然言語の指示から動作する Colab ノートブックを生成します。

以下の記事も参照してください。

blog.g-gen.co.jp

Claude Code とは

Claude Code は、Anthropic が提供する、ターミナル上で動作するエージェント型のコーディングツールです。プロンプトを受け取ると、ノートブック全体の構成をあらかじめ設計し、一括で書き下ろすスタイルが特徴です。

検証の前提条件

使用したデータセット

検証には、Kaggle で公開されている「Japanese Universities」データセットを使用しました。1872 年以降の日本の大学情報を網羅したオープンデータです。

データセットの主な仕様は以下のとおりです。

項目 仕様
公開者 webdevbadger
内容 1872 年以降の日本の大学情報(所在地、創立年、評判、難易度など)
ライセンス Open Data Commons Public Domain Dedication and License(ODC-PDDL)
行数 / 列数 813 校 / 22 列
対象範囲 47 都道府県すべてを網羅
創立年範囲 1872 年 11 月(明治期)〜 2022 年 4 月(近年)
設置主体内訳 Private 626 校 / Public 101 校 / National 86 校
主なカラム codenamename_jptype(National / Public / Private)、addressstate_jplatitudelongitudefound(YYYY-MM)、faculty_countdepartment_countreview_ratingreview_countdifficulty_SDdifficulty_rank(A〜F)

当データセットは、設置主体や地域の分布に明確な構造を持ち、創立年の時間軸も広いため、探索的データ分析(exploratory data analysis、以下 EDA)の検証素材として適しています。EDA とは、本格的なモデリングに入る前に、データの分布や欠損、変数間の関係を可視化しながら把握する作業です。AI に EDA を依頼し、その出力の質を比較する用途にも向いています。

投入したプロンプト

両者には、以下の 4 つの観点を網羅する EDA を依頼する同一の本文を、いずれも日本語のプロンプトで与えました。

  1. データ品質 : 欠損、重複、異常値、基本特性、数値変数間の関係
  2. 地理的分析 : 大学の空間分布と都道府県・地域別の設置主体構成
  3. 機関特性 : National / Public / Private を規模と評判の両面から比較
  4. 時系列分析 : 創立の経年トレンドと設立時期別の設置主体構成

加えて、最終成果物に「分析から得られた重要な気づきを 5 つ」を含めること、および日本語テキストが正しく表示されることを条件としました。

なお、公平性のため分析を依頼する本文は両者で同一にしていますが、成果物の保存先の指示だけは実行環境に合わせて変えています。Claude Code はローカルのターミナルで動作するため、「成果物を output/ フォルダに保存する」よう明示的に指示しました。一方、データサイエンスエージェントは Colab Enterprise 上でノートブック自体が保存されるため、この指示は与えていません。

データサイエンスエージェントに入力したプロンプト(分析本文は Claude Code と同一)

Claude Code のターミナルに入力したプロンプト

評価の観点

生成されたノートブックの品質を、以下の軸で観察しました。

  • 実行性(エラーなく走るか)
  • カバレッジ(プロンプトの要求項目を満たしているか)
  • コード品質(慣用的か、再利用可能か)
  • 可視化の量と質
  • 説明可能性(各ステップの意図が読み取れるか)
  • 構造の見通しの良さ

生成されたノートブックの全体像

データサイエンスエージェントの特徴

データサイエンスエージェントは、タスクをサブタスクに分解し、各ステップの目的を明示してから実行します。出力されたノートブックでは、各コードセルの直前に「Reasoning : ...」という Markdown セルが配置され、これから何を行うか、なぜその処理が必要なのかが自然言語で解説されます。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 各セルが自己完結する(必要なインポートをセル内で都度実行する)
  • 「データの読み込み → 欠損値の確認 → 補完処理 → 可視化」のように段階を明示する
  • 各ステップに Reasoning ブロックを付与する
  • エラーや警告が発生した場合、それを検知して次のセルでリカバリするプロセスが記録される

ステップごとの透明性の確保が、データサイエンスエージェントの設計思想の中核と言えます。

データサイエンスエージェントのコードセル上部に表示される Reasoning マークダウン

Claude Code の特徴

Claude Code は、ノートブック全体を 1 つの完成品として設計してから書き下ろします。プロンプトを受けると、内部で全体構造をプランニングし、必要なライブラリ、再利用するカラーパレットや定数、セクション構成を最初に決定したうえで、一括でノートブックを出力します。

主な特徴は以下のとおりです。

  • インポート文とグローバル定数(TYPE_ORDERTYPE_PALETTE など)を冒頭に集約する
  • 同じ可視化スタイルを全セクションで一貫させる
  • セルあたりのコード密度が高く、1 つのセルで複数のグラフを配置する
  • 各セクションの最後に「ポイント」として短い解釈を記述する

観点別の比較

コードの量と構造

出力されたノートブックの構成を数値で示します。

項目 Claude Code データサイエンスエージェント
総セル数 55 41
コードセル 30 16
Markdown セル 25 25
総コード行数 約 353 行 約 286 行
インポートの位置 冒頭に集約 各セルで都度実行

セル数やコード行数の違いは、それぞれの設計思想を反映しています。Claude Code は完成されたレポートとしての密度を重視し、データサイエンスエージェントはステップごとの実行ログとしての読みやすさを重視していると言えます。

可視化のスタイル

Claude Code はライブラリ選択の幅が広く、folium による地図プロット、seabornviolinplotpairplotheatmap などを柔軟に使い分けます。1 つの観点に対して多角的にアプローチする構成です。

データサイエンスエージェントは、plotly express による地図プロットや、matplotlibseaborn を組み合わせたシンプルな boxplot、積み上げ棒グラフが中心です。種類を絞ることで、初学者でもプロセスを追いやすい一貫性を持たせています。

Claude Code が生成した Folium 地図と violinplot/heatmap

データサイエンスエージェントが生成した Plotly Express 地図と box plot

説明可能性

ここが 2 つのアプローチで最も大きく分かれるポイントです。

Claude Code が生成するノートブックは、コードは洗練されているものの、「なぜその可視化手法を選んだのか」といった意図はコードから読み解く必要があります。一定以上のデータ分析リテラシーを前提としたレポート構成です。

一方、データサイエンスエージェントでは、各セルの直前に処理の意図が明記されます。例えば欠損値処理のフェーズでは、以下のような Reasoning が出力されます。

Reasoning: Based on the analysis of missing values, I will impute phone with 'Unknown' as it is a categorical identifier. For numerical columns review_rating, review_count, and difficulty_SD, I will use median imputation as it is more robust to outliers. For the categorical column difficulty_rank, I will use mode imputation.

データサイエンスエージェントの Reasoning 付き欠損値補完セル

Claude Code の可視化中心の欠損値処理セル

「何を、どう処理して、なぜそうするのか」が逐一言語化されるため、データ分析を学習中のメンバーにとって、ノートブック自体が良質なチュートリアル教材となります。

データクレンジングへの姿勢

データクレンジングに対する姿勢も対照的です。

Claude Code は欠損値を可視化して報告するに留め、欠損のまま分析を進めます。EDA としては伝統的な進め方で、欠損のパターン自体に情報があるため、むしろ望ましいという見方もあります。

データサイエンスエージェントは、欠損値を統計的に補完(インピュテーション)します。インピュテーションとは、欠損したセルを平均値や中央値などで埋める処理のことです。phone'Unknown'、数値カラムは中央値、カテゴリカラムは最頻値で埋める、という戦略を文章で宣言してから実行します。下流のモデリングに繋ぐパイプラインを想定すると、この明示性は実務で有用です。

どちらが正解ということはなく、Claude Code は分析者の判断を読者に委ね、データサイエンスエージェントは判断を逐一表に出す、という思想の違いです。

コードの再利用性

Claude Code はグローバル定数(TYPE_ORDERTYPE_PALETTE)と再利用可能なヘルパー関数(iqr_outliers)を冒頭で定義し、以降のセルがそれを参照する構造になっています。コードベースとして手入れし続ける用途に適しています。

データサイエンスエージェントはセルごとに自己完結しているため、一部のセルだけを別のノートブックにコピーして流用するのが容易です。「特定の処理だけ使い回したい」というユースケースには、データサイエンスエージェントのスタイルが向きます。

設計思想の対比

これまでの検証を踏まえ、両者の設計思想の違いを一覧にまとめます。

観点 Claude Code データサイエンスエージェント
出力の性格 完成形のレポート 実行ログ・チュートリアル
プランニング 上位から一括生成 ステップ単位で漸進的に実行
説明可能性 サマリでの論評 各セルに Reasoning を配置
カバレッジ 網羅的かつ深層的 コアとなる観点に集中
エラーハンドリング エラーを起こさない前提のコード エラー時は次セルでリカバリを実行
コードの密度 高い 低い(可読性重視)
再利用性 グローバル定義による一元管理 セルごとの自己完結型
介入の容易さ 低い 高い
想定ユーザー 経験豊富なアナリスト 学習者・ビジネス層・探索的分析

ユースケース別の使い分け

データサイエンスエージェントが向いているケース

データ分析の学習フェーズ
Reasoning が併記されるため、分析者の思考プロセスを追体験する教材として使用できます。

対話的な探索フェーズ
「ここまでの結果を踏まえ、次は別の切り口で検証したい」といった、人間が途中で介入しながら進める探索に適しています。

ビジネス層によるデータ探索
非開発者が自然言語でデータを問い合わせる際、処理がブラックボックス化せず、結果の根拠をステップごとに確認できます。

Colab 環境での完結
Colab 起動を前提とした環境設定コードも含まれるため、ブラウザのみで即座に分析を開始したい場合に最適です。

パイプラインの部分流用
セル自己完結型のため、データクレンジングのセルだけを別ノートブックにコピーするといった部分流用がしやすくなります。

Claude Code が向いているケース

迅速なレポート作成
分析結果を素早くレポートとして共有したいケースで、一括生成が強みを発揮します。可視化のバリエーションが豊富で、レポートとしての完成度が高い特徴があります。

経験豊富なアナリストの叩き台
コードが慣用的で密度が高いため、これをベースに独自のカスタマイズや手動の書き換えを素早く行う用途に適しています。

要求項目の網羅(カバレッジ重視)
プロンプトに指定したチェックリスト的な要求に対して、抜け漏れなく一括で対応させたい場合に有利です。

カスタムビジュアライゼーションの使用
folium のクラスタリング地図、scatter matrix、violin plot など、データ分析で慣習的に使われる可視化を幅広く使いたい場合に引き出しが多くなります。

ハサナル・バロキ (記事一覧)

クラウドソリューション部 クラウドサポート課。インドネシア北スマトラ州ビンジャイ市出身。

YKK株式会社での金型設計を経て IT 業界へ転身。AI/システムエンジニアとしての経験を積み、現在は G-gen にてクラウドサポートに従事。

趣味は水泳と RAG チャットボット開発(OpenAI・Gemini・Vector Search 等)。好きな食べ物はラーメンと寿司。