G-gen の荒井です。当記事は Google Cloud Next '26 in Las Vegas の1日目に行われたブレイクアウトセッション「Fast-track to Google Workspace: Smooth migration, adoption, and interoperability」の速報レポートをお届けします。
G-gen Tech Blog では、現地でイベントに参加したメンバーや、日本から情報をウォッチするメンバーが、Google Cloud Next '26 に関連する記事を発信します。

セッションの概要
当セッションでは Google Workspace へスムーズに移行するための新しいアプローチとツールが紹介されました。具体的には、インフラストラクチャを必要としない新しいデータ移行ツール「Data Import」や、Gemini を活用した Microsoft Office ファイルの相互運用性の向上、そしてレガシーなマクロの変換機能について解説されました。
これらの機能により、移行にかかるコストと時間を大幅に削減し、ユーザーの生産性を早期に高めることが期待できます。

データ移行の課題と新しいアプローチ
従来のデータ移行における課題と役割分担
従来のシステムから Google Workspace へ移行する際、移行作業は大きな障壁となります。従来のデータ移行プロセスにおいて直面しやすい主な課題は以下の通りです。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 時間とコスト | 従来のオンプレミス型データ移行ツールでは移行ツールのライセンス費用や移行ツールを稼働させるインフラ基盤の費用が発生し、データ移行が高額になる傾向があります。 |
| 移行速度の遅延 | 移行は数ヶ月に及ぶプロセスとなることが多く、そのタイムラインからビジネスオペレーションに支障をきたす可能性があります。 |
| エラーデータ | 完璧な移行ツールは存在しないため、データ損失のリスクも発生します。また不完全なデータが存在する場合、パートナーや顧客が独自のスクリプトを作成したり手動で対応したりしなければならないケースもあります。 |
また移行プロジェクトを進めるにあたり、以下関係者による協力が不可欠です。
| 関係者 | 役割 |
|---|---|
| お客様 | プロジェクトの監督およびデータ移行作業だけでなく、新しいツール導入に関する運用ルールの策定やユーザー教育を主導。 |
| パートナー | 導入計画の策定やシステム設計などプロジェクトの管理。 |
| 移行を容易にするガイダンス、テクニカルサポート、および包括的なデータ移行ツールの提供。大規模で複雑な移行には、Google のプロフェッショナルサービス組織が技術的監督やアーキテクチャ支援でパートナーをサポート。 |

Data Import の概要と利点
Google は、クラウドネイティブな新しいデータ移行システム「Data Import」を発表しました。仮想マシンやクラウドインフラの構築、インストールが不要なため、従来のデータ移行に比べコスト負荷が低減されます。
| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| ゼロコスト | クラウドネイティブツールであり、仮想マシンなど追加インフラコストなしで利用可能です。 |
| 包括的なデータ移行 | メール、カレンダー、連絡先などのコアデータに加え、Outlook のルール、カレンダー設定、暗号化されたコンテンツ、Microsoft Teams などの多様なデータソースやメタデータも単一のツールで移行可能です。 |
| 管理性 | 管理コンソールに組み込まれ、シームレスにデータ移行を実行できます。 |
| 高速な移行 | 特に Exchange Online からの移行において、従来のデータ移行ツールの5倍の速度を実現します。 |
| 移行計画 | ソースデータ(アカウント)のスキャンからデータに基づいた正確な予測に置き換えることが可能です。また移行完了までに必要な時間の見積り(タイムライン)を算出できます。 |
| 高いスケーラビリティ | 1バッチあたり最大5,000ユーザー、最大10バッチを並行して実行でき、計50,000ユーザーの同時移行が可能です。 |

今後のロードマップ
ロードマップの概要
Data Import は2026年4月現在、Exchange Online からの移行において一般提供されています。今後はさらにサポート対象を拡大し、より包括的なデータ移行を実現する予定です。
今後のロードマップは以下の通り計画されています。
Q2(4月〜6月)
- Exchange Online への機能追加(In-place archives、グループメールボックス、タスク、暗号化 E メール等)
- OneDrive と Microsoft Teams がベータ版公開
Q3(7月〜9月)
- OneDrive と Microsoft Teams が一般公開
- SharePoint Online のベータ版および一般公開
- GCC High 環境への対応

Office 編集モード
Gmail での Office 編集(Q2 にベータ版公開予定)
Gmail 上で直接 Office ファイルを編集・返信できます。

Google ドキュメント
法務向けなどの機能強化
キャプション、相互参照、行番号、スモールキャップスなどをネイティブにサポートします。
Google スプレッドシート
パフォーマンスとスケール向上
セルの制限数が従来の2倍(2,000万セル)に拡張されます。
高度な分析機能
ピボットテーブルやチャート機能が強化されます。

Google スライド
埋め込みメディアサポート(2026年6月頃にベータ版公開予定)
PowerPoint からインポートした際の埋め込みオーディオやビデオをサポートします。
パフォーマンス向上(2026年6月頃にベータ版公開予定)
スライドの容量制限が従来の5倍に拡張されます。

Google Apps Script(GAS)
自然言語による VBA 変換(2026年6月頃にアルファ版公開予定)
自然言語の指示でレガシーな Excel マクロを Google Apps Script(GAS)に変換し、Google スプレッドシートで使用できるようにします。
GAS のコアサービス化(2026年6月頃に一般公開予定)
GAS が Google Workspace のコアサービスに認定され、エンタープライズグレードの信頼性、セキュリティ、コンプライアンスを満たせるようになります。
自然言語でのデバッグ(2026年6月頃にアルファ版公開予定)
GAS のエラー修正が、自然言語による対話形式で可能になります。

ドライブと SharePoint
承認機能(2026年6月頃に一般公開予定)
アプリを横断したワークフローを可能にする、軽量な承認機能が搭載されます。API も実装される予定です。
Workspace Studio(一般公開済み)
AI ネイティブな自動化やエージェント作成が可能であり、Microsoft Power Automate の代替手段となり得ます。

Chat、Meet、Teams
Meet ハードウェア相互運用性(一般公開済み)
1タッチで Microsoft Teams や Zoom の会議に直接参加できます。
Chat のゲストアカウント(一般公開済み)
外部ユーザーをフル機能で Chat に招待しつつガバナンスを維持できます。

戦略の転換
パワーユーザー層へのアプローチと5つのユーザー層
これまで Google は「大多数のユーザーが使いやすいこと」を重視し、一部の高度な機能を使う「パワーユーザー」は Microsoft Office などの他社製品を利用し続ける傾向にあると分析していました。
しかし、Gemini の登場によって、この考えは大きく変わりました。パワーユーザー向けの機能開発において、Google は投資をこれまでの5倍に増やし、パワーユーザーが必要とするすべての機能を Google Workspace で提供する方針へと転換しました。
単に Microsoft の機能をそのまま真似るのではなく、変更履歴やグラフ作成といった基本機能から根本的に作り直しています。具体的には、以下の5つのユーザー層に向けて機能を強化していく想定が述べられました。
- Foundational(一般ユーザー)
- Analyst(分析者)
- Executive(経営層)
- Legal(法務)
- Ecosystems(エコシステム)

Foundational(一般ユーザー)
メールで Office ファイルを共同編集するにあたり「Outlook と Word」よりも「Gmail と Google ドキュメント」の組み合わせが一番使いやすい状態を目指します。
Analyst(分析者)
Google スプレッドシートのパフォーマンスを向上させ、分析者や財務部門が求める高度なデータ分析を可能にします。
パフォーマンスとスケール
セルの制限数を従来の2倍(2,000万セル)に拡張(2026年4月現在、ベータ版公開済み)。さらに将来的に再度2倍にする計画があります。
高度な分析機能
ピボットテーブルやチャート機能を強化します。
Executive(経営層)
Google スライドを強化し、経営層が求めるレベルの高いプレゼンテーション資料の作成に対応します。
スライドの容量制限の拡張
スライドの容量制限を従来の5倍に拡張します。
埋め込みメディアサポート
Microsoft PowerPoint からインポートした際の埋め込みオーディオやビデオをシームレスにサポートします。
Legal(法務)
Google ドキュメントで、法務部門に必須の厳格な文書フォーマットを完全に再現できるようにします。
法務向けフォーマット
キャプション、相互参照、行番号、スモールキャップスなどをネイティブにサポートし、Word ファイルとの完璧なラウンドトリップ(Google ドキュメントで編集したデータを Microsoft Word で開いても、データやレイアウトが損なわれないことを指す)を保証します。
変更履歴の再設
2026年末までに、Microsoft Word との相互運用性を損なうことなく、変更履歴機能を根本的に再設計します。
Ecosystems(エコシステム)
外部システムと直接連携できるようにし、Microsoft 365 から Google Workspace に移行しても、これまでの業務フローを変えずに作業できるようにします。
SAP、Oracle、Litera、ServiceNow、Workday などのサードパーティ製エコシステムに、Google ドキュメント、スプレッドシート、スライドを直接組み込みます。
これらの進化により、組織の Google Workspace への移行と定着、そして新しい働き方へのトランスフォーメーションがこれまで以上に加速することが強調されました。
荒井 雄基 (記事一覧)
クラウドソリューション部 クラウドサポート課
オンプレ環境のネットワーク・サーバーシステムを主戦場としていたが、クラウド領域にシフト。現在は Google Workspace を中心に企業の DX 推進をサポート。
・Google Cloud Partner Top Engineer 2025 / 2026
・Google Cloud 認定資格 7冠
・Jagu'e'r エバンジェリスト
