Humanoid robots in pediatric care(Google Cloud Next '26速報)

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G-gen の山崎です。当記事は、Google Cloud Next '26 in Las Vegas の3日目に行われたライトニングトークセッション「Humanoid robots in pediatric care」のレポートです。

G-gen Tech Blog では、現地でイベントに参加したメンバーや、日本から情報をウォッチするメンバーが、Google Cloud Next '26 に関連する記事を発信します。

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セッションの概要

Enchanted Tools 社の Firas Farraj 氏により、小児医療および高齢者介護の現場で活躍するヒューマノイドロボット「Miroki」と Google の AI 技術との統合について紹介されました。

現在の高齢化社会における課題

ケアワーカーの人員不足

現在の高齢化社会において、介護および医療業界は深刻な負担を強いられています。

高齢者、子供をケアするケアワーカー(介護・医療従事者)への負担は増大し続けており、2030年までに世界中で現在より2,000万人のケアワーカーが必要になると予測されています。

施設は人材の採用に苦労しており、人員不足の解決が急務となっています。

小児医療の現場における課題

小児医療の現場に目を向けると、毎年40万人の子供たちががんと診断されており、そのうちの3分の1以上が放射線治療を必要としています。

これまで経験したことのない新しい状況と慣れない環境での治療は、子供たちに大きな恐怖を与えます。

彼らには、時間をかけてそばに寄り添い、守ってくれるケアワーカーの存在が必要です。しかし、ケアワーカーは日々の膨大な業務に追われており、一人ひとりの子供に対して十分な時間を割くことは困難です。

高齢者介護の現場における課題

高齢者介護の現場においても状況は同様であり、高齢者介護施設のスタッフは毎年40%が離職しているという事実が示されました。この高い離職率は、施設運営における知識の喪失や採用コストの増加など、ビジネスにとって非常に厳しい影響を及ぼします。

このような業界の課題を解決するため、ロボットが実行可能なタスクを担い、ケアワーカーを支援するアプローチが求められています。

ヒューマノイドロボット Miroki の特徴

人中心のデザインと導入要件

Enchanted Tools 社が開発しているヒューマノイドロボット Miroki は、これまでの産業用ロボットとは全く異なるコンセプトで設計されています。Firas Farraj 氏は、人の生活空間にロボットを導入するためには、以下の3つの要素が不可欠であると述べました。

信頼(Trusted)
ロボットが常に安全に稼働し、100%の確率でタスクを遂行する。

有用性(Useful)
単に見た目が良いだけでなく、実際に現場で役立つ機能を持っている。

愛着(Loved)
利用者が「そばにいてほしい」と感じるデザインである。

もしロボットが威圧的なデザインや、70 kg もある巨大な機械であった場合、子供や高齢者のそばに置いておきたいと思う人は多くありません。

そのため Miroki は、魅力的で親しみやすいキャラクターとしてデザインされています。単なる実用性だけでなく、人を中心とした環境においては感情的なつながりを作り出すことが必要です。

ハードウェアインターフェースと安全性

ロボットが環境内のあらゆる物体を100%の成功率で操作することは、2026年4月現在のロボット工学の技術レベルにおいては困難です。

この課題を解決し、ロボットに何ができて何ができないかを利用者に明確に伝えるため、Enchanted Tools 社はロボット専用のハンドルとアクセサリーのエコシステムを開発しました。

Miroki は、この専用ハンドルが取り付けられた物体のみを安全に操作できるように設計されています。これにより、利用者はハンドルの有無を見るだけで、Miroki ができることを直感的に理解できます。

また、特殊な移動システムを採用しており、柔軟かつ静音性が高く、人のすぐそばで安全に稼働できるように設計されています。

医療および介護現場での導入事例

小児医療での利用

フランスのモンペリエにあるがん研究所では、小児がんの放射線治療において Miroki が導入されています。放射線治療室は地下壕のような構造になっており、治療中は患者以外は立ち入ることができません。治療自体に痛みはありませんが、巨大な機械が患者の周囲を動き回る空間は、子供たちにとって非常に恐ろしいものです。

これまで、恐怖心を和らげるために子供たちには事前に鎮静剤が投与されていました。そのため、本来は10分で済む治療プロセスが1時間以上かかっていました。

現在では、事前に子供と Miroki の間に関係性を築いた上で、治療室に Miroki が同席する取り組みが行われています。Miroki がそばにいることで子供たちは安心し、鎮静剤を使用せずに治療を受けることができるようになりました。この結果、1回のセッション時間が50分から25分へと半減し、同じ時間枠で2倍の数の子供たちをケアできるようになりました。

高齢者介護施設での利用

高齢者介護の環境において、Miroki はケアワーカーの業務を多角的に支援しています。具体的なタスクとしては、受付、高齢者向けの朝の体操の進行、記憶力ゲームの実施、食事トレイの運搬補助、グループ活動全般の支援などです。

Miroki がこれらの業務をサポートし、スタッフに寄り添うことで、スタッフと入居者双方の生活の質を向上させています。初期の導入結果では、スタッフと入居者の間で80%の満足度が得られています。スタッフの満足度を高く保つことは定着率の向上につながり、課題である40%という高い離職率を低下させるための重要な要素です。

Google の AI 技術との統合

Enchanted Tools 社は、Google DeepMind 社と緊密に連携し、ロボットのアーキテクチャに Gemini を統合しています。

音声認識および対話機能には Gemini Live の音声機能が使用されており、自然なコミュニケーションを実現しています。また、周囲の環境を認識し理解する機能には Gemini Robotics が使用されています。

セッション内のデモ動画では、利用者が「メガネをなくしてしまった」と伝えると、Miroki がエリアをスキャンしてメガネを発見し、さらに本を読むための居心地の良い場所を提案する様子が紹介されました。音声だけでなく状況を視覚的に捉え、複数のタスクを連続して支援する能力が示されました。

質疑応答

本セッションの後半では、参加者と登壇者による質疑応答が行われました。

質問1 : 物理的な力が必要なタスクへの対応

質問
高齢者介護において、患者や入居者を持ち上げたり移動させたりするような、物理的な力が必要なタスクへの対応はどのようになっているか。

回答
2026年4月現在、まだその段階には到達していないが、現在の技術の加速を考慮すると、2〜3年のタイムラインで物理的タスクにも対応できるようになると予測している。技術の進歩に合わせてケアワーカーを全面的に支援できるように機能を拡張していく方針だ。

質問2 : 感情の知覚

質問
誰かが怒っている、悲しんでいるといった感情の知覚についてどこまで進んでいるのか。

回答
感情の検出には、視覚分析、声のトーンや表現方法の分析、そして発話されるテキストの分析という3つのモダリティを使用している。Gemini のマルチモーダル機能により、人が感情を表現している場合は十分に把握可能となる。人が感情を表現していない場合は、非言語的なシグナルを読み取る必要があるため、難易度が高い。

質問3 : ロボットのデザイン

質問
なぜロボットがキツネのような見た目をしているのか。

回答
ロボットのデザインを人の外見に近づけすぎてしまうと、人ができることはすべてできるはずだと利用者が認識する可能性があるため、人とペットの中間のような、これまでにない新しいキャラクターをデザインした。

質問4 : システム構築における課題

質問
システムに Gemini を組み込むことによって直面した課題はあるか。

回答
Google DeepMind 社の素晴らしい働きにより、モデルのパフォーマンスに関する課題は発生していない。一方で、モデルをクラウド上で実行するため、ネットワークの通信環境が悪い環境下では課題が残っている。将来的にはオフライン環境下においても十分なパフォーマンスを発揮できるようにしたい。

ブースでの実機レポート

セッション終了後、会場内の Enchanted Tools 社の展示ブースに立ち寄り、Miroki の実機を見ることができました。

展示ブースでは、スムーズに移動しながら展示ブースに訪れた人々と自然な会話を行う姿を見ることができ、ハードウェアの工夫と AI 技術の統合が実用的なレベルに達しつつあることを感じました。

山崎 曜(記事一覧)

クラウドソリューション部

元は日系大手SIerにて金融の決済領域のお客様に対して、PM/APエンジニアとして、要件定義〜保守運用まで全工程に従事。
Google Cloud Partner Top Engineer 2025 選出。
Google Cloud 全 13 資格保有。
フルスタックな人材を目指し、日々邁進。