Cloud IdentityライセンスでAppSheetアプリは作成できるのか試してみた

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G-genでセールスを担当している村上です。本日は Cloud Identity Free Edition の環境で AppSheet (無償版) が利用できるのか試してみました。結論としては「Cloud Identity Free Edition だけでは AppSheet は利用できないが、Google Workspace と併用することで組織にストレージ容量割り当てがあれば可能」です。その検証の経緯をご紹介します。

はじめに

Cloud Identity の登録方法

当記事では Cloud Identity の無償版である Free Edition 環境を前提にして検証を行っています。

Cloud Identity の環境準備については、ぜひ以下の記事をご参照ください。

blog.g-gen.co.jp

検証の結果

結果からお伝えしますと、Cloud Identity Free Edition ライセンスだけでは AppSheet は利用できません

Cloud Identity はストレージ領域を持っていないため、AppSheet のデータソースを配置できないことがその理由です。よって AppSheet の運用・開発には有償の Google Workspace ライセンスが必須となります。

ただし Google Workspace と Cloud Identity を併用しており、組織にストレージプールの割り当てがあれば、AppSheet 用のデータソースを配置できますので、アプリの作成が可能です。

当記事では、その検証の経緯をご紹介します。

また検証を進める中である条件で設定を進めると一見連携が出来てしまうように見えた (が、事実上はアプリとして利用できない) 事象に遭遇したため、これも参考情報としてご紹介します。

前提条件

利用するライセンス

  • Cloud Identity Free Edition
  • AppSheet Free Edition

ライセンス割り当て状況

ユーザーである takenobu murakami に Cloud Identity Free Edition のライセンスだけが割り当てられている状態で検証を行います。

以下のスクリーンショットでは Google Workspace Business Standard も表示されていますが、未割り当ての状態です。

Cloud Identity のライセンス割り当て画面

検証1. Cloud Identity でスプレッドシート作成は不可

Google ドライブを開き、データソースとなるスプレッドシートを新規で作成します。

スプレッドシートを新規作成

以下の通りエラーになります。

スプレッドシートエラー画面

これは、Cloud Identity にはストレージ領域がないために、ファイルが作成できないことを意味しています。

このように Cloud Identity のアカウントは、自らの領域に Google Sheets や Google Slides などのファイルを作成することはできません。ただし有償版の Google Workspace のテナントで作成されたファイルへのアクセスは可能で、権限さえあれば閲覧・編集することができます。

そのため Sheets を自組織の領域に作成はできず、よってその Sheets をベースにして AppSheet アプリを作成することもできません。

追加検証 - アプリが作成できたように見える事象

ここで話が終わってしまいそうですが、冒頭に記載したとおり、上記のエラーが出ず AppSheet でアプリ作成までできてしまう状況もご紹介します。

例えば以下のような状況が該当します。

  • 検証2. 共有されたスプレッドシートを AppSheet 側から指定する場合
  • 検証3. 自分がオーナーであるスプレッドシートを AppSheet 側から指定する場合

以降、この2点について説明していきます。

検証2. 共有されたスプレッドシートを AppSheet 側から指定する場合

検証2-1. (参考) スプレッドシートからアプリ作成を試す

有償版 Google Workspace テナントから共有されたスプレッドシートであれば、操作者が Cloud Identity アカウントでも、AppSheet アプリを作成できるのかどうかを試してみます。

まずは有償版 Google Workspace でシートを作成し、私の Cloud Identity アカウントに共有します。

Cloud Identity アカウントで、共有されたシートを開きます。Cloud Identity アカウントでも問題なく、シートを閲覧・編集できています。機能拡張メニューから「アプリを作成」を選択してみます。

スプレッドシートからアプリを作成

以下のとおり「アプリ所有者に連絡してね」のようなメッセージが表示され、アプリは作成出来ません。

エラー表示

検証2-2. AppSheet 側からスプレッドシートを指定する

今度はその反対に、AppSheet 側から同じスプレッドシートを開いてみます。オーナーが私ではないことが表示されています。

AppSheet からスプレッドシートを選択

そのまま選択して進むと、エラーになる訳では無く、アプリが作成出来てしまいます。

AppSheet アプリ開発画面

以下のスクリーンショットを見ると、ストレージ領域が無いはずの Cloud Identity アカウントの Google ドライブ (マイドライブ) に、AppSheet フォルダが出来ています。これは Google Workspace アカウントでスプレッドシートと AppSheet を連携した場合の挙動と同じです。データは開発者アカウントの Google ドライブに保管されます。

これは、ストレージ領域が無い Cloud Identity では、想定外の挙動と言えます。

Google ドライブに AppSheet フォルダが作成された

一見、これで Cloud Identity アカウントで AppSheet アプリが作成・運用できるようにも見えます。しかし、実際にはそうでないことが以下の操作で分かりました。

作成したアプリで試しに写真をアップロードしてみます。

作成したアプリで写真のアップロードを試行

しばらく処理中のままとなり、ある程度時間が経過した後、以下のエラーが返ってきました。メッセージを要約すると、以下の通りです。

  • テーブル (スプレッドシート) である "シート1" にレコードが追加できない
  • 画像が保存できない
  • ユーザーの Google Drive の上限を超過している

アップロード時のエラーメッセージ

Unable to add row to table 'シート1'. → Unable to save image → The user's Drive storage quota has been exceeded. → Error id (略)

この検証で、Google Workspace で作成されたシートを利用しても、やはり Cloud Identity アカウントでは AppSheet アプリが作成できないことが分かりました。

検証3. 自分がオーナーであるスプレッドシートを AppSheet 側から指定する場合

検証の前提

もともと有償の Google Workspace ライセンスを割り当てていたがその後不要になり、Cloud Identity Free Edition ライセンスにダウングレードしたアカウントがあるとします。この場合でも、ライセンス削除の前に作成したスプレッドシートなどのファイルは、ライセンス割り当ての削除後も、自分がオーナーのままGoogle ドライブ (マイドライブ) に残るという仕様があります。

ここではその状況を再現するため、事前に以下の作業を実施しました。

  1. takenobu murakami に Google Workspace Business Standard ライセンスを付与
  2. スプレッドシートを作成
  3. takenobu murakami から Google Workspace Business Standard ライセンス割り当てを削除

Google Workspace ライセンスの割り当てを削除する際、以下のように影響について警告する表示がされますが、構わず続行します。

ライセンス割り当てを削除

検証3-1. (参考) スプレッドシートからアプリ作成を試す

スプレッドシートは Google ドライブ (マイドライブ) に保管されたまま残っています。このファイルを開くと、以下のとおり「空き容量がありません」と表示され、また「拡張機能」タブがグレーアウトしている等の状態になっています。

このスプレッドシートから AppSheet のアプリ作成ができないのは、一目瞭然です。

シートを開いた状況

検証3-2. AppSheet 側からスプレッドシートを指定する

反対に AppSheet 側からシートを指定してみます。今回はオーナーが私である事が表示されています。

AppSheet 側からスプレッドシートを指定

ここでも操作を進めることが可能であり、指定ができたように見えます。しかしながら、アプリから写真をアップロードすると、やはりエラーが表示されます。

写真ファイルのアップロードを試行

先程とはエラーメッセージが異なりますが、アプリとして実用はできません。メッセージは以下のような内容です。

  • テーブル (スプレッドシート) である "シート1" にレコードが追加できない
  • 呼び出し側に権限がない

エラーメッセージ

Unable to add row to table 'シート1'. → The service sheets has thrown an exception. HttpStatusCode is Forbidden. The caller does not have permission: Message[The caller does not have permission] Location[ - ] Reason[forbidden] Domain[global]

これらのことから、Cloud Identity アカウントでは AppSheet との実用的な連携は不可能である、ということが分かりました。

ただし、Google Workspace ライセンスがひとつでも割り当てられており、組織にストレージプールが存在していれば、App Sheet の作成は可能ですのでご留意ください。

村上 丈伸 (記事一覧)

ビジネス推進部 営業2課

アパレル、工場の作業員を経てITの世界へ。弊社では Google Workspace をメインに活動しています!