G-gen の奥田です。本記事は Google Cloud Next '25 in Las Vegas の3日目に行われたブレイクアウトセッション「Conversational agents: Build and deploy no-code/low-code AI Agents」のレポートです。
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セッションの概要
本セッションでは、 Customer Engagement Suite(CES)サービスの紹介と新機能の紹介及び顧客事例の紹介が行われました。
Customer Engagement Suite とは
Customer Engagement Suite(CES)とは、EC サイトのチャットボットサービスの構築といった、顧客対応サービスのための基盤をローコードあるいはノーコードで開発するためのサービス群です。
以下の写真は、セッションで紹介された、Customer Engagement Suite(CES)の全体像です。
Customer Engagement Suite に含まれているサービスは以下となります。
- Conversational Agents
- Agent Assist
- Conversational Insights and Quantily AI
Conversational Agents は、以前の名称の Vertex AI Agents (Playbook とデータストア機能) コンソールと、Dialogflow CX コンソールが統合されたものです。
また、名前の変遷の経緯については質疑応答にて確認しましたので、後述の質疑応答段落を参照してください。
Customer Engagement Suite を導入した顧客からは、以下のビジネスインパクトがあったと述べられました。
- 意図検出の精度 98%
- セルフサービス完結率 60%
- チャットでのCSAT(顧客満足度)が向上 80%
- 店舗への電話問い合わせ件数削減 50%
- 離脱率の低下 62%
- 平均処理時間の短縮 40%
機能の紹介
セッションでは、Conversational Agents の新しい機能について紹介されました。
ハイブリッドエージェントを構築するための統合コンソール
こちらは、2025年の第1クオータまでに公開される予定の機能です。
生成 AI とルールベースのコントロールを単一のコンソールに統合し、マルチモーダルサポート、共同ブラウジングと音声インタラクションのためのライブストリーミング、そして全体的な低レイテンシを実現します。
合計100種類以上のコネクタと接続可能(OOTB Connectors)
OOTB Connectors とは Out-Of-The-Box Connectors の略で、ソフトウェア製品やプラットフォームに標準で組み込まれる、すぐに使用できるコネクタのことです。
30種類以上のデータ取得コネクタ、70種類のアクションコネクタとの接続が可能となります。
音声との低レイテンシな統合
Google DeepMind 社と協力し、自然な人口音声による音声での回答を2025年以内に実現します。
- 音声モデル (STT) の文字起こし機能の強化
- 音声モデル (TTS) の音声機能の強化
音声は日本語も対応予定とのことです。
Hybrid Agents
Generative Playbooks
自然言語によるプロンプト、サンプル、ツールを使って、優れた自然言語アプリケーションを開発できます。
Playbook を用いてエージェントを開発した事例は、以下の記事で紹介しています。
Code blocks
厳格なルールとカスタムビジネスロジックを埋め込むことで、プロンプトを強化し、コードブロックをプレイブックに組み込みます。
Mix & Match
既存の Dialogflow CX フローと新しい Generative Playbooks を組み合わせて、ハイブリッドな会話型エージェントを実現します。
顧客事例
フランスの電気通信事業者であるブイグテレコム社にて、携帯電話の販売サイトに Conversational Agents を導入した事例が発表されました。
構成図
成果
同社では、Conversational Agents の導入により、たった5ヶ月の実装期間でエージェントを作成することができただけではなく、期待を上回る成果を得ることができたと紹介されました。
夜間など、店舗が閉店している間に10,000件以上の会話があり、人間による従来のセールスとエージェントを比較することができました。その成果は、人間による従来のセールスと変わらなかったと発表されました。
質疑応答
質問1: Conversational Agents 統合の背景
質問
Dialogflow CX コンソール と Vertex AI Agents (Playbook とデータストア機能)が Conversational Agents に統合された背景を知りたい。
回答
ユーザーがプロダクションまで進む過程をできるだけシンプルにするために、これらを可能な限り統一しました。
従来は Vertex AI Agents で開発したエージェントを Dialogflow CX コンソールに統合する必要がありましたが、「Conversational Agents」という1つのプラットフォームに統一して、集約して開発することが可能です。
質問2: AI Application への改名の背景
質問
Vertex AI Agent Builder のコンソールが 「AI Application」となった背景を知りたい。
※Vertex AI Agent Builder は、2025年4月に AI Application と改名された
回答
開発者向けサービスと、非開発者向けサービスを分けるためです。
Google 社として、開発者だけではなく非開発者にもサービスを知ってもらいたいという思いがあります。AI Application は主に非開発者向けサービス群となっており、以下のサービスが含まれます。
- Google Agentspace
- Agent Designer
- Customer Engagement Suite
補足
Agent Designer は Google Agentspace に組み込みの、ノーコードでエージェントを開発できる機能です。Google Cloud Next '25 で新たに発表されました。
開発者向けサービスとしては、今回の Google Cloud Next '25 で発表された Agent Development Kit(ADK)などがあります。
どちらのサービスも、内部ではすべて Vertex AI をベースに動いており、基本的には Vertex AI が公開する Web API を利用します。
参考として、3日目に開催された別セッション『Build and deploy multi-agent applications with Vertex AI』で発表されたスライドを掲載します。
Risa(記事一覧)
クラウドソリューション部クラウドデベロッパー課
Google Cloudの可能性に惹かれ、2024年4月G-genにジョイン。
Google Cloud Partner Top Engineer 2025
Google Cloud 11 資格保有。日々修行中です!