G-gen の杉村です。当記事では、Google Cloud(旧称 GCP)と他のパブリッククラウドを専用線接続するサービスである Cross-Cloud Interconnect を詳細に解説します。
概要
Cross-Cloud Interconnect とは
Cross-Cloud Interconnect は、Google Cloud と他のパブリッククラウドを専用線接続するサービスです。
Google Cloud と他のクラウドサービスまでの間の専用線接続は、Google が提供します。このサービスにより、Google Cloud の VPC と、Amazon Web Services (AWS) や Microsoft Azure など他クラウドのネットワークを接続することができます。イメージとしては、コロケーション施設にある Google Cloud のパッチパネルと AWS 等のパッチパネルを Google が管理する回線で接続してくれるようなサービスです。
Google Cloud 側の専用線としては 10 Gbps または 100 Gbps から選択できます。

メリット
当サービスの導入により、以下のようなメリットが考えられます。
- マルチクラウド戦略の推進
- ネットワーク構成のシンプル化
- ネットワーク関連契約のシンプル化
- Google Cloud を複数クラウド・拠点のハブとして利用 (ハブアンドスポーク構成)
専用線サービス
Google Cloud にはオンプレミスと接続するための専用線サービスとして Cloud Interconnect が存在し、当記事で紹介する Cross-Cloud Interconnect はその関連機能という扱いです。
Cross-
の付かない Cloud Interconnect は、Google Cloud からコロケーション施設までの接続性を提供するサービスです。以下の記事もご参照ください。
対応クラウド
Cross-Cloud Interconnect は、以下のクラウドサービス提供事業者に対応しています。
- Amazon Web Services (AWS)
- Microsoft Azure
- Oracle Cloud Infrastructure (OCI)
- Alibaba Cloud
対応ロケーション
クラウドごとに、対応しているロケーション (リージョン) が異なります。AWS を例にとると、AWS と Google Cloud の両方で「東京リージョン」「大阪リージョン」が利用可能です。
2023年6月現在、Google - AWS 間接続を例に取ると、エクイニクスの TY2 が対応施設となっています。
詳細は公式ドキュメントをご参照ください。
- 参考 : Supported locations for AWS
- 参考 : Supported locations for Azure
- 参考 : Supported locations for OCI
- 参考 : Supported locations for Alibaba Cloud
料金
Cross-Cloud Interconnect (パッチパネル間接続) と VLAN Attachment (論理接続) の両方に、時間あたりの料金が発生します。
冗長回線を組んでいる場合は、主系と従系の回線の両方に Cross-Cloud Interconnect と VLAN Attachment の料金が同じように発生します。
また通常通り Google Cloud から出ていくパケット量に応じた課金も発生しますが、これは Cross-Cloud Interconnect を使っていない場合に比べて割安な単価が適用されます (ただし割引は VLAN Attachment が存在するリージョンからの通信のみ)。
あくまで参考ですが公式料金ページの計算例を記載します (2023年6月時点のもの)。
課金要素 | 数量 | 計 |
---|---|---|
Cross-Cloud Interconnect connection (主・従系) |
10 Gbps * 2 回線 * 24h * 30 days | $8,064 |
VLAN Attachment (主・従系) | 2 回線 * 24h * 30 days | $144.00 |
Egress (外向き) トラフィック (北米地域の単価) |
200 TiB | $4,096.00 |
- | 合計 | $12,304/月 (約 ¥1,722,560/月) ※¥140/ドルで計算 |
ハブとしての Google Cloud
Cross-Cloud Interconnect と Google Cloud のネットワークサービスである Network Connectivity Center を組み合わせることで、Google Cloud を拠点間接続のハブのように扱い、WAN を構成することが可能です。
Network Connectivity Center の Hub を中央に配置し、その周りにスポークとして AWS や Azure (Cross-Cloud Interconnect で Google Cloud と接続) を配置し、オンプレミスネットワークには Cloud Interconnect (専用線) や Cloud VPN で接続を確立すれば、ハブ&スポーク構成でサイト間通信を実現できます。
このサイト間通信機能のスポークにあたるリソース (専用線や VPN) を配置できるリージョンは決まっていますが、米国やインドに加えて日本のリージョンもサポート対象となっています。

回線の手配の流れ
Google Cloud 側と対面クラウド側の双方で回線手配や、クラウドリソース作成・設定作業を行います。
AWS を例に取ると、以下のような流れで回線の手配を行います。
No | タイトル | 概要 |
---|---|---|
1 | ロケーション選定 | プライマリ (主系) とセカンダリ (従系) のロケーション (リージョン) を選定します。Google Cloud 側と AWS 側の両方で決定します |
2 | Cross-Cloud Interconnect 接続の注文 | Google Cloud 側に Cross-Cloud Interconnect の注文を行います。主系・従系ともに、承認するとポートが確保されます |
3 | AWS 側のポートの注文 | AWS 側でポートを注文し、LOA (letter of authorization) をダウンロードします。またその LOA を Google に送付します。LOA が Google に届くと、クラウド間接続の手配が始まります |
4 | Google Cloud 側リソースの作成 | VLAN attachment (論理接続) の作成や VPC との紐づけ、BGP セッションの設定などを行います |
5 | AWS 側リソースの作成 | Direct Connect Gateway、Virtual Interface、VGW (Virtual Private Gateway) などの設定を行います |
6 | 疎通確認 | Google Cloud コンソールから AWS 側の信号受信の有無を確認できます |
可用性 SLA
SLA の適用条件
Cloud Interconnect では可用性 SLA が提供されています。しかし SLA が提供されるには、Google の指定する冗長化構成が取られている必要があります。
最低2つの Connection コンポーネントが、異なる Edge availability domain (接続施設の障害ドメイン。一つの都市圏内に複数存在する) で接続されていれば、99.9% の SLA が適用されます。これはつまり、主系と従系がそれぞれ1回線ずつの構成です。
また、上記の冗長構成がさらに複数リージョンで構成されている場合、99.99% の SLA が適用されます。これは、主系と従系が計4回線以上の状態です。
図を含む詳細な説明は、以下の公式ドキュメントをご参照ください。
Financial Credit
SLA 適用条件を満たしている構成を利用中に、実際の稼働率が SLA を下回った場合には Google から Financial Credit が補填されます。Financial Credit は Google Cloud の請求に適用可能なクーポンのようなものと考えればよいものです。
実際の稼働率が可用性 SLA を下回った場合に Financial Credit を受け取るには、ユーザは Google に申請をする必要があります。その際は、ダウンタイムを示すログの添付も必要です。
その他、SLA に関する各種条件は公式ドキュメントをご参照ください。
注意点
Google Cloud は、他のクラウド側の専用線の可用性を保証しません。
また、他クラウド側のサポートチケットの起票なども行いません。
あくまでサポート対象は、Google Cloud の責任範囲となります。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO
元警察官という経歴を持つ IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。
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