G-gen の奥田です。本記事は Google Cloud Next Tokyo '24の1日目に行われた AI と機械学習のセッション「競争環境の変化に適応!Google Cloud で実現する LION 流需要予測と生成 AI 活用」に関する速報レポートをお届けします。
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概要
本セッションは、LION 社における需要予測に関する取り組みについて紹介するセッションです。
同社独自のモデル開発、組織的・技術的課題の解決方法やビジネス上のメリットなどについても紹介されてました。
なぜ需要予測を行うのか
消費財業界を取り巻く環境は大きく変化しており、以下の背景から、従来の需要予測が陳腐化してきています。
- デジタル技術の進化
- 生活様式の変化と生活者ニーズの多様化
- 環境変化に対する小売業・卸売業との共創
これらの要因から需要変化に対する従来型の手法は限界を迎えており、適正在庫の維持と品切れリスクを低減するには新しい方法を用いる必要がありました。
需要予測のアーキテクチャ
新しい需要予測のためのプラットフォームとして、同社は Google Cloud を採用しました。その理由は3点です。
- BigQuery を利用したい
- スクリプトの定期実行を容易に実装できる
- データを BigQuery に蓄積し、今後活用したい
本セッションでは、同社の需要予測に対する考え方が紹介されました。
同社は、商品のライフサイクルフェーズ毎に異なる需要予測モデルを選択しています。本セッションでは、「販売直後予測」と「安定期予測」について紹介されました。
同社では、2つの異なる粒度で需要予測モデルを作成しています。
- 在庫管理単位(SKU) × 出荷数量(個数)
- ブランド × 出荷金額
前者の数値は SCM 部門が利用し、後者は営業・事業部門が利用します。需要予測値のユースケースごとに、異なるモデルで予測値を算出しているのが特徴的です。需要予測値は週次で更新され、関係チームに共有されます。
また同社では、商品の重要度と予測精度によって、需要予測値を何に使い方を変えています。以下のスライドからは、予測精度が低い場合に、その値は利用しないことがわかります。また、予測精度が高くても、重要度が高い商品については、需要予測値を機械的に業務に適用することはせず、ギャップ把握と監視に用いています。
Google Cloud の環境構成図は、以下のとおりです。
Vertex AI Workbench 上で需要予測スクリプトを実行しており、スクリプトの定期実行は Vertex AI Workbench のノートブック エグゼキュータ機能を利用しています。
Vertex AI Workbench については、以下の当社記事で詳しく説明しています。
生成AIを活用したチャレンジ
セッションでは、同社内で実施された様々な生成 AI を用いた取り組みについて紹介されました。
同社では、社内チャットボットを作成し、約5,000名の国内従業員に対して対話型チャットアプリを提供しています。このチャットボットは、毎週1-2万回のベースで利用されているとのことです。
また、Salesforce で入力された営業売上情報分析についても紹介されました。
通常業務として Salesforce や日報などで営業活動の進捗を確認していますが、人力で個々の日報データから情報を集計する必要があり、手間がかかっていることが課題でした。そのため、Google Cloud を用いてデータの可視化を自動化しました。
Salesforce のデータを CSV エクスポートし、BigQuery に蓄積します。その後、BigQuery に蓄積したデータを Looker Studio を用いて可視化しています。
また、BigQuery ML を活用し、活動内容に対するポジティブ・ネガティブ評価を行う事例が紹介されました。ML.GENERATE_TEXT
関数を利用し、BigQuery 上で処理を行います。
検証結果を通じ、BigQuery ML を用いることでこれまで活用が難しかった非構造化データを生成 AI によって効率的に変換し、需要把握などに活用できる可能性を感じたとのことです。
今後は、今回のアーキテクチャをベースに関連部門との情報連携のあり方を議論していくとのことです。
ビジネス価値の創出
最終章では、需要予測を業務に適用する際の課題やビジネス価値を創出するための取り組みが紹介されました。
需要予測を業務に適用する課題として、以下が挙げられました。
- 予測の信頼性に対する不安
- 活用方法を明確にする必要性
- 新しい業務に関する不安
同社はビジネス価値を創出するために、以下の2つの方法で取り組んでいます。
1. シンプルで、効果の大きい業務から段階的に導入
PoC 実施後、現場が効果を実施したものから運用ルールを策定し、パイロット導入の効果を定量評価しています。
2. 組織横断で新しい体制を設計
2023年11月より、事業、物流、生産、購買部門と組織を横断したタスクフォースを発足し、SCM 高度化に向け、新しい業務プロセスを検討中です。
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奥田 梨紗(記事一覧)
クラウドソリューション部クラウドデベロッパー課
前職はベトナムのIT企業。
Google Cloudの可能性に惹かれ、2024年4月G-genにジョイン。Google Cloud 全 11 資格保有。日々修行中です!