Google Cloud Next Tokyo '24 速報レポート(キーノート・2日目)

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G-gen の杉村です。当記事では、Google Cloud Next Tokyo '24 のキーノート(2日目)に関する速報レポートをお届けします。

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概要

Google Cloud Next Tokyo '24

2024年8月1日(木)と2日(金)の2日間、神奈川県の「パシフィコ横浜ノース」にて、Google Cloud Next Tokyo '24 が開催されています。

会場となるパシフィコ横浜ノースは、みなとみらい駅からほど近いコンベンションセンターです。大小42の会議室を備え、多くのイベントが開催されています。

G-gen 社は展示ブースを出展するほか、スポンサーセッションへの登壇、Champion Innovator としての LT 登壇などを行いました。

パシフィコ横浜ノース

キーノート(基調講演)とは

キーノート(基調講演)とは、カンファレンスの基本テーマや重要な発表を行うための、メインと呼べるような講演のことです。

Google Cloud Next Tokyo '24 は2日間開催されますが、各日の朝10時にキーノートがあり、2日目のキーノートでは Google Cloud が提供する生成 AI について、特に開発者の目線から注目すべき発表が行われました。

なお当記事には、筆者が現地で撮影した写真のほか、Google Cloud Next Tokyo '24 公式サイトで公開されたアーカイブ動画からのスクリーンショットも含まれていることにご留意ください。

キーノート会場

Vertex AI Agent Builder

Google Cloud カスタマー エンジニアリング 技術本部長の渕野 大輔氏は、生成 AI アプリケーションの需要が高まっていること、またハルシネーションが課題となっていることについて述べた後、AI エージェントと呼ばれる仕組みについて紹介しました。

Google Cloud では Vertex AI Agent Builder を用いると、AI エージェントをノーコード・ローコードで開発することができます。

Google Cloud カスタマー エンジニアリング 技術本部長 渕野 大輔氏

日本テレビ放送網株式会社 DX推進局 データ戦略部 主任 辻 理奈 氏は、Vertex AI Agent Builder を用いてチャットボットを開発した事例を紹介しました。BigQuery や Cloud Run なども組み合わせて活用することで、小さい工数で迅速に開発ができたことを紹介しました。

同氏は発表を、「PoC から実用化のフェーズ」へ、というキーワードで締めくくりました。

日本テレビ放送網株式会社 DX推進局 データ戦略部 主任 辻 理奈 氏

Google Vids、Imagen 3、Veo

Google Cloud 渕野氏は続けて、Google Vids(グーグル・ビズ)について紹介しました。Google Vids は Google Workspace アプリの1つで、写真や動画などの素材をもとに、カスタマイズされた業務用動画を作成するサービスです。Google Cloud Next '24 in Las Vegas で初めて発表され、現在はアルファ版でのテスト中です。

同ツールでは Google Photo 等に保存された素材写真や素材動画をもとに、音楽やナレーション付きの動画を作成できます。背後で Gemini が活用されており、自然言語での指示により、動画が自動的に編集されます。

Google Vids

以下は、Google Vids を紹介する公式動画です。

Imagen 3(イマジェン・スリー)は Google Cloud Next Tokyo '24 の直前に発表された、最新の画像生成モデルです。現在は 一部の Google Cloud ユーザー向けに、Private Preview 公開されています。Imagen 3 では、従来から精度を出すのが困難とされている、画像へのテキスト埋め込みにおいても高い精度が出るとされました。

Imagen 3

Veo(ベオ)は動画をゼロから生成するサービスです。Veo についても、簡単に紹介されました。Veo は、年内に Public Preview になるとされています。

動画生成サービス Veo

データエージェント

最近公開された新機能

Google Cloud プラットフォーム & テクニカル インフラストラクチャ バイス プレジデント兼ジェネラル マネージャーのブラッド カルダー氏は、AI エージェントの1種であるデータエージェントについて紹介しました。

BigQuery データキャンバスは、Google Cloud Next '24 in Las Vegas で初めて発表された機能です。自然言語を使って、BigQuery 上のデータの探索、変換、クエリ、可視化を行うためのユーザーインターフェイスです。AI による BigQuery 支援サービスである Gemini in BigQuery の1機能であり、現在は Preview 利用可能ですが、8月に一般公開されるとしました。

マテリアライズド ビュー、パーティション、クラスタリングの Recommender も同様に、8月に一般公開予定の Gemini in BigQuery の機能であり、現在でも Preview 利用可能なサービスです。過去30日間のクエリユースケースに基づいて、テーブルのマテリアライズド ビュー化や、パーティション化、クラスタ化を推奨してくれます。

パフォーマンス最適化のためのレコメンダー

同氏は同日、Data Preparation for Gemini BigQuery の Preview 利用を開始するとしました。欠損値の推測、クリーンアップとキュレーション、データパイプラインなどを AI 支援のもと行うための機能です。なお同機能のプレビューについては2024年8月4日現在、リリースノート等には登場していませんが、近日中の登場が見込まれます。

Data Preparation for Gemini BigQuery

Gemini in Looker では、スライドの自動生成が Public Preview となりました。Gemini が Google Slides でプレゼンテーションを自動で生成します。

データエージェントのデモ

Google Cloud カスタマー エンジニア の高村 哲貴氏が、これらの機能についてデモを行いました。

「安心してください、履いてますよ」

チャットツールに架空の「Next スニーカー」の売上実績を「ヒートマップで教えて」と質問すると、ヒートマップグラフを含む返答が返ってきます。またさらに質問を繰り返すと、YouTube の視聴数増加と連動していることや、今後の予測、欠品のリスク等について回答されました。

チャットツールによる自動的な回答

対象商品の類似品について質問すると、商品カタログから見た目がよく似た商品を抽出して回答してくれます。

よく似た製品の抽出

また分析結果のサマリをチームに共有するよう依頼すると、Google Sheets にまとめた情報を、Chat スペースに共有することができます。

このような仕組みは、Vertex AI、Looker、BigQuery を組み合わせて実現することができます。

データエージェントのアーキテクチャ

ヤマト運輸社の事例

ヤマト運輸株式会社 執行役員 輸配送オペレーション システム統括 秦野 芳宏 氏は、過去10年で、年間の荷物取扱量が160%増えていることに言及し、顧客の行動変化に対応したうえで、現場負担を軽減するためにデジタルを活用していると述べました。

ヤマト運輸株式会社 執行役員 輸配送オペレーション システム統括 秦野 芳宏 氏

同社はデジタルの力で社会貢献をするにあたり、圧倒的データ量を扱う必要があり、そのためのプラットフォームとして Google Cloud や Google Maps Platoform を利用しています。

最初から大規模に開発するのではなく、アジャイル開発を採用し、短期間のサイクルでリリースを繰り返しています。

一部のドライバーへ負担が偏ることを防ぎ、公平に業務を分担することに加え、ドライバー1人あたりの配達可能数も向上する見込みです。

コードエージェント

コードエージェントの事例について、トヨタ自動車株式会社 生産デジタル変革室 AIグループ長 後藤 広大 氏が登壇しました。

同氏は Google Kubernetes Engine(GKE)で AI プラットフォームを構築していることを明らかにしました。プラットフォームを世界的に展開していくにあたり、課題となるのは GPU リソースの効率化、スケーラビリティやセキュリティの確保、運用コストの最適化です。また、日進月歩の AI 技術へのキャッチアップ、開発スピードの加速と開発者体験の向上が急務であるとしました。

Google Kubernetes Engine(GKE)で AI プラットフォームを構築している

同氏は GKE Autopilotイメージストリーミングを併用することで、機械学習モデルの学習にあたって発生する GPU 等のコストを20%低減できたほか、Pod の起動時間を75%短縮することができたとしています。結果として、製造現場の工数が年間1万時間以上、削減できたとしました。

同社では Cloud Workstations を活用することで、開発環境の構築が短縮され、セキュリティ対策も効率化できたことも明らかにしました。また Cloud Workstations の導入にあたっては、Google Cloud 社の Tech Acceleration Program(TAP)プログラムを活用することで、伴走支援を受けられたとします。

Cloud Workstations を活用

同社では Gemini Code Assist も検証中で、さらなる開発者の生産性向上を図っています。

同社は今後、製造現場での知見をデータベース化し、Gemini による RAG に利用することで、ドメイン知識を活用できるようにすることを想定しています。

Gemini Code Asisst と Gemini Cloud Asisst

ブラッド カルダー氏が再度登壇し、Gemini Code Asisst に関連する以下のアップデートが紹介されました。

  • Gemini Code Asisst の日本語対応(Gemini 1.5 モデルによる)
  • コンテキストアウェアなコード生成(200万のコンテキストウインドウを活用)
  • Code Transformation(自然言語による自動リファクタリング)

また同氏は、Gemini Cloud Assist も発表しました。アプリケーションの設計、運用、最適化を支援するものとされ、Google Cloud でのアプリケーション開発を支援する機能と思われますが、詳細は紹介されませんでした。

Gemini Cloud Assist

データベース

Spanner

Google Cloud データベース ジェネラル マネージャー兼バイス プレジデントのアンディ ガットマンズ氏は、データベースに関する最新情報を発表しました。

大規模にスケーリング可能なマネージドデータベースである Spanner について紹介し、同サービスでの最新機能を紹介しました。

Spanner Graph は、Spanner 内に実装可能なグラフデータベースです。ナレッジグラフ、レコメンデーションエンジン、ソーシャルネットワーク、不正検出などに活用することができます。クエリは Graph Query Language(GQL)で行います。Spanner インスタンスの中に構築可能なため、リレーショナルデータベースの利点と併用することができます。

Spanner Graph のユースケース

Spanner Graph による可視化

さらに同氏は、Spanner で 全文検索とベクトル検索が実装されたことを明かしました。これにより Spanner データベースに強力な検索を行うことができるようになります。新しいベクトル検索機能は、Google の ScaNN 検索アルゴリズムをベースとしています。

Spanner での全文検索・ベクトル検索

Spanner エディションは、新しい価格設定モデルです。当日には詳細は紹介されませんでしたが、同発表の翌日には Google Cloud の管理者向けにメールが配信されており、以下の内容が明かされました。

  • 新料金体系は2024-09-24から利用可能
  • Standard, Enterprise, Enterprise Plusの3ティア
  • 課金方法が全体的に変更
  • 2025-01-13には既存インスタンスも新体系に移行するので、見積もりの必要がある

Spanner Editions

Bigtable

続いて同氏は、Google Cloud の NoSQL(ワイドカラム型)データベースである Bigtable に関するアップデートも紹介しました。

Bigtable distributed counters(分散カウンター)は、書き込み時に min、max、sum などで集計した値を書き込める仕組みです。従来は Preview でしたが、同日に一般公開となりました。

同氏は続けて、過去最大のアップデートとして、Bigtable で SQL が利用可能になったことを明らかにしました。Bigtable は NoSQL データベースであるため、基本的には各プログラミング言語向けの SDK を用いてクエリを行う必要があります。今回、Bigtable に対して SQL が利用可能になったことで、クエリユースケースによっては遥かに少ない行数でクエリを書くことができます。

Java SDK によるクエリと SQL によるクエリの比較

また同氏は、最近の Google Cloud と Oracle の連携のパートナーシップ推進について紹介しました。従来は Oracle は Google Cloud を認定クラウドとしておらず、原則的に Oracle Database を使うことが不可能でしたが、2024年6月に新たなパートナーシップが発表され、Oracle Database を Compute Engine VM で稼働可能になったり、Google Cloud Marketplace から Oracle Autonomous Database、Oracle Exadata Database を調達可能になったことを明かしていました。

同氏は続けて、Cloud SQL for SQL Server で Enterprise Plus エディションが利用可能になったことを紹介しました。Enterprise Plus エディションはより高い性能と可用性を実現できるエディションであり、Cloud SQL for PostgreSQL / MySQL では2023年7月から利用可能でした。

セキュリティ

Google Cloud Security ソリューションマーケティング担当部長 である橋村 抄恵子氏は、Google が2022年に買収した Mandiant によるセキュリティ対策や、最新のセキュリティ動向について語りました。

Google と Mandiant ではセキュリティ領域における生成 AI の活用を推進しています。同氏は Gemini による脅威インテリジェンス(情報セキュリティに関連する脅威に対する情報収集)の効率化を紹介しました。

生成 AI により不正なコードを説明する

Google の統合セキュリティプラットフォームである Google Security Operations(Google SecOps)の Investigation Assistant 機能では、「過去3日間の失敗したログインを探して」といったプロンプトを投入すると、生成 AI が返答を返し、推奨される対策までが提示されます。

これらは Gemini in Security Operations と総称され、セキュリティ関連の意思決定に費やす時間を7分の1に削減できるとしました。

続けて、Gemini in Security Command Center が発表されました。Security Command Center は Google Cloud のセキュアでない設定を検知する機能等を備えた Google Cloud サービスです。Gemini in Security Command Center では自然言語での脅威検索機能に加えて、「AI を守る」という観点も含まれています。

Model Armor は今期公開予定とされる、生成 AI への保護機能です。不適切なプロンプトやレスポンスをブロックすることで、生成 AI 関連の安全性を確保し、データ漏洩のリスクを低減する仕組みとされます。

Model Armor

Google Workspace

株式会社三井住友フィナンシャルグループ 常務執行役員(Chief Data and Analytics Officer)の高松 英生 氏は、Google Cloud 執行役員 グローバル スペシャリティセールス Google Workspace 事業本部の上野 由美 氏を伴い、同グループでの Google Workspace 活用事例を紹介しました。

同グループではレジリエンス強化のため、マルチクラウドを推進しています。同グループでは従業員のワークスペースとして Microsoft 365 を利用していましたが、Microsoft 365 が停止した場合に備え、Google Workspace と ID 連携を行い、両現用系とすることで、電子メールや Web 会議等の可用性を高めることを計画しています。

Microsoft 365 と Google Workspace の両現用系構築

同氏は攻めの IT、守りの IT(攻めるための守り)の両方を重視するとし、また攻めの IT では生成 AI の活用もポイントとなると考えていることを述べ、今後は社内の各種業務に用途を広げていくと語り、Google Workspace での生成 AI 関連機能の拡充に期待を示しました。

Google Cloud 学習用プログラム

Google Cloud 渕野氏が再度登壇し、開発者向けの Google Cloud 学習用プログラムについて紹介しました。

公式学習サイトである Google Cloud Skills Boost の無料特典が受けられる Google Cloud Innovators プログラムでは Google Cloud Next Tokyo ’24 限定キャンペーンを実施しています。

Google Cloud Innovators プログラム

Google Cloud Next Tokyo '24 限定キャンペーン

生成 AI Innovation Awards は、生成 AI に関する先進事例とその成果を競うコンペティションです。第2回の開催が予定されており、最優秀賞として Google Cloud Next in Las Vegas への招待券が進呈されます。

生成 AI Innovation Awards

次回の Google Cloud Next Tokyo

同氏は最後に、次回の Google Cloud Next Tokyo が、1年後の2025年8月5日〜6日に、東京ビッグサイトで開催されることを明らかにしました。

次回の Google Cloud Next Tokyo は、1年後

関連記事

前日(初日)のキーノートでは、Google Cloud が日本を重視している姿勢や、生成 AI 関連の発表が行われました。以下の記事をご確認ください。

blog.g-gen.co.jp

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杉村 勇馬 (記事一覧)

執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長

元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 12資格、Google Cloud認定資格11資格。X (旧 Twitter) では Google Cloud や AWS のアップデート情報をつぶやいています。