G-gen の杉村です。2025年3月のイチオシ Google Cloud(旧称 GCP)アップデートをまとめてご紹介します。記載は全て、記事公開当時のものですのでご留意ください。
- はじめに
- Security Command Center Enterprise で Amazon EC2 のスキャン
- Vertex AI Agent Engine が Preview → GA
- Google スライドの Gemini サイドパネルが日本語に対応
- Spanner で階層型ストレージが登場(GA)
- Analytics Hub の egress controls と Data clean room が全 BigQuery Edition に対応
- Gemini 2.0 Flash の fine-tuning が GA
- Google Meet でバーチャル背景生成や画質・音質向上など生成 AI 機能
- Google Meet で自動議事録およびリアルタイム音声文字起こし
- Deep Research と Gems が全エディションで利用可能に
- Cloud Storage に新機能 Anywhere Cache が登場(GA)
- Gemini のコンテキストキャッシュがPreview→GA
- Compute Engine に M4 VM が登場
- BigQuery と Spanner の連携が強化
- Google ドキュメントで AI 要約のビルディングブロックを作成できるように
- Gemini アプリに「Canvas」が登場
- NotebookLM にマインドマップ機能が追加
- Vertex AI Search の answer メソッドが強化
- Google、マルチクラウドセキュリティソリューションの Wiz を買収
- Dataform が Secret Manager と統合
- BigQuery workflows が BigQuery pipelines に改名
- BigQuery Studio と Git の統合が Preview
- BigQuery ML で Claude モデルが利用可能に(GA)
- Cloud Storage の管理情報閲覧ツール Storage Intelligence
- Cloud SQL でインスタンス削除後もバックアップを保持可能に
- Cloud SQL に read pools が登場(Preview)
- Gemini 2.5 Pro Experimental が発表
- Gemini が日本語 PDF を読み込み可能に
- BigQuery の Search Index に column granularity 機能が追加
- Cloud Run で呼び出し時の IAM チェックの無効化が可能に
- Google Docs の Help me create が日本語を含む追加言語に対応
- BigQuery pipelines が Preview -> GA
はじめに
当記事では、毎月の Google Cloud(旧称 GCP)や Google Workspace(旧称 GSuite)のアップデートのうち、特に重要なものをまとめます。
また当記事は、Google Cloud に関するある程度の知識を前提に記載されています。前提知識を得るには、ぜひ以下の記事もご参照ください。
リンク先の公式ガイドは、英語版で表示しないと最新情報が反映されていない場合がありますためご注意ください。
Security Command Center Enterprise で Amazon EC2 のスキャン
Enable VM Threat Detection for AWS (2025-03-03)
Security Command Center の Enterprise ティアで、Amazon EC2 のディスクのマルウェアスキャンができるようになった(Preview)。
AWS Lambda と AWS Systems Manager(SSM)を利用して、EC2 インスタンス上のマルウェアをスキャンして Security Command Center へ通知する。
Vertex AI Agent Engine が Preview → GA
Vertex AI Agent Engine overview (2025-03-04)
Vertex AI Agent Engine(旧LangChain on Vertex AI、Vertex AI Reasoning Engine)が Preview→GA。
Langchain、LangGraph などのフレームワークをデプロイ可能なフルマネージドの Agent プラットフォーム。
Google スライドの Gemini サイドパネルが日本語に対応
Use Gemini in the side panel of Google Slides in seven new languages (2025-03-05)
Google スライドの Gemini サイドパネルが日本語を含む7言語に新たに対応。画像生成も可能になる。
- 日本語
- フランス語
- ドイツ語
- イタリア語
- 韓国語
- ポルトガル語
- スペイン語
Spanner で階層型ストレージが登場(GA)
Tiered storage overview (2025-03-10)
Spannerで階層型ストレージが登場(GA)。
SSDとHDDから選んでデータを保存できる。デフォルトではSSDに保存されるが「ローカリティグループ」を作成してテーブル/列を指定し、時間経過したデータを HDD に自動移行。HDD はレイテンシ・スループットに劣るがサイズあたりの費用が安い。
Analytics Hub の egress controls と Data clean room が全 BigQuery Edition に対応
BigQuery release notes - March 10, 2025 (2025-03-10)
Analytics Hub の egress controls と Data clean room が全 BigQuery エディションに対応(オンデマンド含む)。
従来はオンデマンドまたは Enterprise Plus エディションが必要だった。
Gemini 2.0 Flash の fine-tuning が GA
Tune Gemini models by using supervised fine-tuning (2025-03-11)
Gemini 2.0 Flash の fine-tuning が GA。
トレーニングデータとしてテキスト、画像、音声、PDF を使ったファインチューニングが可能。
最低100個以上のデータを用意することが推奨されている。
Google Meet でバーチャル背景生成や画質・音質向上など生成 AI 機能
Google Meet で、バーチャル背景生成や、スタジオ風の画質・音質の再現などの生成 AI 機能が組み込まれる。
Business Standard 以上のエディションに2025-03-10から順次ロールアウトされる。
Google Meet で自動議事録およびリアルタイム音声文字起こし
Google Meet の "Take notes for me"(自動議事録)およびリアルタイムの音声文字起こしが日本語に対応する。録画した動画にも字幕を付与可能。
Business Standard 以上の Google Workspace エディションに付帯。
2025-03-12から順次ロールアウトするが、「性能と品質を注視するため、通常よりずっと遅いペースでロールアウト」される予定。
Deep Research と Gems が全エディションで利用可能に
Deep Research and Gems in the Gemini app are now available for more Google Workspace customers (2025-03-13)
Gemini ウェブアプリにおいて、Deep Research と Gems が、これまで提供されていなかった Business Starter、Enterprise Starter、Education、Frontline、個人無償アカウントなどでも利用可能になった。
Cloud Storage に新機能 Anywhere Cache が登場(GA)
Overview of Anywhere Cache (2025-03-13)
Cloud Storage に新機能 Anywhere Cache が登場(GA)。ゾーンごとに読取キャッシュを作成。
キャッシュと同ゾーンの VM からの読み取りで、読取の高速化とマルチリージョンバケットからのデータ転送料金節約に役立つ。機械学習や分析ワークロードを想定。GB/Hour ごとの課金が発生する。
Gemini のコンテキストキャッシュがPreview→GA
Context caching overview (2025-03-13)
Gemini のコンテキストキャッシュがPreview→GA。
システム指示プロンプトを事前にキャッシュしておき料金を節約できる。画像や長大なテキストが毎回プロンプトに含まれている場合に有用。トークン/時間ごと課金。Gemini 1.5 Pro/Flashで利用可能。
Compute Engine に M4 VM が登場
M4 machine series (2025-03-14)
Compute Engine に M4 VM が登場。メモリ最適化マシンタイプの新型で最大 224 vCPUs / 3 TB RAM。
SAP HANA 等を想定。普通の Persistent Disk は使えず、Hyperdisk がサポートされる。
BigQuery と Spanner の連携が強化
BigQuery release notes - March 17, 2025 (2025-03-17)
BigQuery と Spanner の連携が強化された。
- External dataset(別名 Federated dataset)で Spanner の全テーブルが BigQuery から見える
- EXPORT DATA 文で BigQuery から Spanner へデータをリバース ETL できる
Google ドキュメントで AI 要約のビルディングブロックを作成できるように
Introducing a new building block that summarizes content with Gemini in Google Docs (2025-03-17)
Google ドキュメントで、AI 要約のビルディングブロックを作成できるようになった。
ドキュメントの先頭に要約を載せるなどが容易になる。ドキュメントが変更されたときに要約に反映する更新オプションも設定可能。

Gemini アプリに「Canvas」が登場
Try Canvas, a new way to collaborate with the Gemini app (2025-03-18)
Gemini アプリに「Canvas」が登場。生成した文章を手動で編集しつつ、Gemini に調整を指示できる UI。
生成した文章に対して、文章の長さやフォーマル具合の調整、修正の提案等を行うことができる。作成した文章は Google ドキュメントにエクスポート可能。
無償アカウント含む全 Google アカウントで、すぐに利用可能。

NotebookLM にマインドマップ機能が追加
New features available in NotebookLM and NotebookLM Plus (2025-03-19)
NotebookLM にマインドマップ機能が追加。ウェブサイト、動画、アップロードした PDF など、読み込ませたデータソースを解釈して、マインドマップ式に描画してくれる。
会議の議事録やドキュメントを構造化して表示してくれるので、資料の迅速な理解や思考の整理に役立つ。
無償アカウント含む全 Google アカウントで、すぐに利用可能。

Vertex AI Search の answer メソッドが強化
Vertex AI Agent Builder release notes - March 19, 2025 (2025-03-19)
Vertex AI Search の answer メソッドが強化。
- 非構造化データストアから画像ファイルを取得できるように
- 回答内でチャート(棒グラフ、折れ線グラフ等)を生成できるように
いずれも以下の注意点がある。
- Preview リリースである
- 英語クエリのみ対応
- API のみ対応
Google、マルチクラウドセキュリティソリューションの Wiz を買収
Google + Wiz: Strengthening Multicloud Security (2025-03-19)
Google、マルチクラウドセキュリティソリューションの Wiz を買収。
320億ドル(約4.8兆円)、全額現金取引。Google にとって最大規模の買収とされる。従来から持つ Google SecOps や Mandiant などの「侵害後」に強いソリューションに加え、Wiz の「未然に防ぐ」強さが追加されると見られる。
Dataform が Secret Manager と統合
Use Secret Manager to store sensitive data (2025-03-20)
Dataform が Secret Manager と統合。
PostgreSQL、MySQL、Oracle など、BigQuery 以外の ID/Pass を要する外部データベースと接続する際に作るコネクションプロファイルの認証情報の保存先として使える。
BigQuery workflows が BigQuery pipelines に改名
Introduction to BigQuery pipelines (2025-03-20)
BigQuery workflows が BigQuery pipelines に改名された。
BigQuery workflows は、Web コンソール上で簡単に実装できるフルマネージドのパイプラインツール。現在ではまだ Preview 公開。

BigQuery Studio と Git の統合が Preview
Announcing BigQuery repositories: Git-based collaboration in BigQuery Studio (2025-03-20)
BigQuery Studio(BigQuery コンソール画面)と Git の統合が Preview。
BigQuery コンソール画面で GitHub、GitLab 等のリモート Git レポジトリを接続して commit、push、diff、PR 作成などができる。

BigQuery ML で Claude モデルが利用可能に(GA)
The ML.GENERATE_TEXT function (2025-03-20)
BigQuery ML で Claude モデルが使えるようになった(GA)。
ML.GENERATE_TEXT 関数で Vertex AI のリモートモデルを呼び出して BigQuery のデータを使って簡単に推論できる。
Cloud Storage の管理情報閲覧ツール Storage Intelligence
Storage Intelligence (2025-03-21)
Cloud Storage に管理情報閲覧ツール Storage Intelligence が登場。組織やフォルダレベルで閲覧可。
加えて管理情報を BigQuery にエクスポートする Storage Insights datasets も登場。これらで利用状況を可視化し、セキュリティ向上やコスト最適化を図ることができる。
Cloud SQL でインスタンス削除後もバックアップを保持可能に
Retained backups (2025-03-24)
Cloud SQL でインスタンス削除後もバックアップを保持できるようになった。
従来までは、インスタンスを削除すると最高365日保存の Final Backup を残してバックアップは削除されてしまう仕様だったが、残るようになった。オンデマンドバックアップは無期限保存、自動バックアップは保持日数設定に応じて自動削除される。
Cloud SQL のバックアップの一通りの仕様は、以下の記事も参照。
Cloud SQL に read pools が登場(Preview)
About read pools (2025-03-25)
Cloud SQL に read pools が登場(Preview)。Cloud SQL Enterprise Plus エディション(MySQL、PostgreSQL)で利用可能。
リードレプリカの集合体であり、単一 IP アドレスをエンドポイントとして、読み取りワークロードを負荷分散。ノード数は調整可能で、最大20ノード。以前からあるリードレプリカとの違いは、読み取りエンドポイントが単一 IP アドレスであることと、プールとして一括管理できること。
Gemini 2.5 Pro Experimental が発表
Gemini 2.5: Our most intelligent AI model (2025-03-25)
Google が最新版生成AIモデル Gemini 2.5 Pro Experimental を発表。
1.5 Flash Thinking と同じく思考プロセスも出力される「思考型」。当初100万トークンのコンテキストウインドウで後日200万に拡大予定。先行して Google AI Studio や Gemini ウェブアプリ(Gemini Advanced)で利用可能。
また、2025年3月28日、Google Cloudの Vertex AI でも利用可能になった。

Gemini が日本語 PDF を読み込み可能に
Gemini in Drive PDF Viewer is now available in 20+ additional languages (2025-03-26)
Google ドライブで、Gemini が日本語 PDF を読めるようになった。
Google ドライブの Gemini サイドパネルにおいて、通常の PDF やスキャンされた PDF 等を生成 AI が読み取り、要約したり、質問に答えたり、PDF 内容に基づいてメールを作成したりできる。従来の英語に加え、今回は日本語を含む20以上の言語に対応。
BigQuery の Search Index に column granularity 機能が追加
Index with column granularity (2025-03-26)
BigQuery の Search Index に column granularity 機能が追加された。複数列に Search Index を作成する際、オプションで粒度を指定することでインデックスファイルに情報が付加され、検索クエリを最適化できる。
Cloud Run で呼び出し時の IAM チェックの無効化が可能に
Disable the Cloud Run Invoker for services (2025-03-28)
Cloud Run serivces/functions で、呼び出し時の IAM チェックの無効化が可能に。
以前は allUsers に呼び出し権限を付与してサービスを一般公開していたが、組織ポリシーで IAM のドメイン制限をしている場合はサービス公開に手間があった。この機能により、一時的に組織ポリシーを無効化するなどの対応が不要になる。
詳細は以下の記事も参照。
Google Docs の Help me create が日本語を含む追加言語に対応
Help me create in Google Docs now available in seven additional languages (2025-03-31)
Google Docs の Gemini 機能、Help me create が日本語を含む追加言語に対応。
ゼロからドキュメント作成を自然言語で指示。「@(ファイル名)」で他のファイルに基づいた指示も可。文字だけでなく画像やスタイルも含めて作るのが従来との違い。
2025-03-31から15日ほどかけてロールアウト。
BigQuery pipelines が Preview -> GA
Schedule pipelines (2025-03-31)
BigQuery pipelines(旧称 BigQuery workflows)が Preview → GA。
また、data preparation を BigQuery pipelines から呼び出せるようになった。さらに、BigQuery Studio の「スケジュール設定」画面から、スケジュールを一覧管理できるようになった。
以下の記事も参照。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長
元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。
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