G-gen の森です。Google Cloud のオブジェクトストレージサービスである Cloud Storage において、見落とされがちなのがレプリケーション料金です。当記事では、ロケーションタイプの選択による料金スパイクの事象と、リージョン間レプリケーション料金の仕組み、ロケーションタイプを決めるポイントについて解説します。

事象
Cloud Storage バケットを新規に作成し、大容量(全体で約12.4TiB)のオブジェクトをアップロードしました。すると、想定よりも大きな Cloud Storage 料金が発生しました。
オブジェクト数は1,000個以内であり、オペレーション料金は大きく発生しない想定でした。
料金がスパイクした SKU を確認すると、Network Data Transfer GCP Replication within Asia(CA61-E18A-B2D6)でした。
なお、当記事で扱うこの事象は、以下の SKU でも発生する可能性があります。
- Network Data Transfer GCP Replication within Europe(
CB83-3C2D-160D) - Network Data Transfer GCP Replication within Latin America(
AFC0-C8B7-9708) - Network Data Transfer GCP Replication within Northern America(
AED0-3315-7B11) - Network Data Transfer GCP Replication within Oceania(
1193-6316-413E)
原因
当該のバケットを作成する際、ロケーションタイプの設定において、コンソールのバケット作成画面におけるデフォルト設定であるマルチリージョンを選択していました。
マルチリージョンまたはデュアルリージョンでは、オブジェクトの作成や更新を行うと、データが地理的に離れた場所にレプリケーション(コピー)されるため、リージョン間レプリケーション料金が発生していました。この仕様を認識していなかったため、レプリケーション料金は想定外のものとなりました。
ロケーションタイプ
ロケーションタイプと可用性
Cloud Storage では、バケット作成時にロケーションタイプ、すなわちデータの保存場所を、以下の3つのうちいずれかから選択します。
| ロケーションタイプ | 説明 |
|---|---|
| リージョン(Region) | 東京(asia-northeast1)などの特定の1地点に保存 |
| デュアルリージョン(Dual-region) | 東京と大阪(asia1)などの特定の2リージョンに保存 |
| マルチリージョン(Multi-region) | アジア(asia)などの広大な地理的エリア内の複数リージョンに保存 |
上記のうち、デュアルリージョンとマルチリージョンは、リージョン障害に対する耐性を持ちますが、内部的にリージョンをまたいでデータをコピーするため、リージョン間レプリケーション料金が発生します。
- 参考 : バケットのロケーション
リージョン間レプリケーション料金とは
リージョン間レプリケーション料金とは、デュアルリージョンまたはマルチリージョンバケットにオブジェクトを作成したり、更新したりする際に発生する、データ転送費用のことです。
Cloud Storage の下り(Egress)料金は外部に読み出すときにだけ発生すると誤解しがちです。しかし実際には上記のように、デュアルリージョンまたはマルチリージョンバケットのように冗長化構成をとっているバケットで、書き込み時にもネットワーク費用が発生するという点に注意が必要です。
料金の算出方法
リージョン間レプリケーション料金は、書き込んだデータのサイズに応じて発生します。2026年1月現在の主要なロケーションでの料金例は以下の通りです。
| ロケーション | 料金 (1 GiB あたり) |
|---|---|
| 北アメリカ(US など) | $0.02 |
| ヨーロッパ(EU など) | $0.02 |
| アジア(ASIA など) | $0.08 |
最新の正確な料金単価は、以下の公式料金ページをご確認ください。
ターボレプリケーション
デュアルリージョンのバケットでは、オプション機能としてターボレプリケーション(Turbo Replication)を有効にできます。この機能が有効になっていると、通常より料金が多く発生します。
まず、ターボレプリケーションがオフの場合、リージョン間のコピーは以下の仕様で行われます。
- 新しく書き込まれたオブジェクトの 99.9% に対しては1時間以内を目標にリージョン間でコピーを完了させる
- 残りのオブジェクトに対しては12時間以内を目標にコピーを完了させる
一方でターボレプリケーションを有効にすると、オブジェクトの100% が、15分以内にコピー完了するように SLA が設定されます。
- 参考 : データの可用性と耐久性 - 複数のリージョンにわたる冗長性
- 参考 : データの可用性と耐久性 - ターボ レプリケーション
- 参考 : Cloud Storage Service Level Agreement (SLA)
その代わり、ターボレプリケーションを有効にすると、リージョン間レプリケーション料金の単価が割増になります。高頻度で大容量の書き込みが発生するワークロードでターボレプリケーションを有効化すると、コストが大幅に上昇する可能性があるため、RPO 要件に基づいた適切な判断が必要です。
ロケーションタイプ決定の判断基準
可用性と堅牢性
単一リージョンのバケットを使用することで、レプリケーション料金を排除できます。分析用の一時ファイルや頻繁に更新されるログなどは、単一リージョンのバケットを選ぶことで、コストを最適化できます。
単一リージョンのバケットであっても、データは複数のゾーンに冗長化されており、十分に高い冗長性と堅牢性(年間99.999999999%)を持っています。
一方で、リージョンレベルの障害が許容できないほどの高い可用性が必要なデータは、その性質によっては、データ転送のコストをかけてでもデュアルリージョンやマルチリージョンを検討します。
コストとレイテンシの最適化
マルチリージョンバケットに保存されるオブジェクトを読み取る際は、読み取り元のコンピューティングリソース(Compute Engine など)が存在するリージョンにかかわらず、常にネットワーク下り料金が発生します。
そのため、特定のリージョンのコンピューティングリソースから頻繁にオブジェクトを読み取る場合は、デュアルリージョンまたは単一リージョンを選択することで、コストを最適化できます。
また、デュアルリージョンまたは単一リージョンは、読み取り側のコンピューティングリソースと同一リージョンであれば、レイテンシも最適化されます。
森 寛之(記事一覧)
クラウドソリューション部
三重県出身、愛知県在住のクラウドエンジニア!
業務システムエンジニアからクラウドエンジニアへ転向。
好きな分野は 業務分析と、BigQuery でデータ分析。
