G-gen の松本です。この記事では Google Workspace の AppSheet Core と AppSheet Enterprise Plus の違いについて解説します。
概要
AppSheet とは
AppSheet とは、Google が提供するノーコード開発プラットフォームです。プログラミングの知識不要で、業務アプリケーションを開発できます。その中でも AppSheet Core プランは、Google Workspace のサービスの一部として提供されています。
AppSheet を使うと、専門的なプログラミング知識がなくても、スプレッドシートなどの既存のデータソースを活用して、チェックリスト・在庫管理・日報・顧客管理などのカスタム業務アプリを簡単に作成できます。
AppSheet Core については、以下の記事も参照してください。
AppSheet のサブスクリプションプラン
AppSheet には Free、Starter、Core、Enterprise Plus の計4つのサブスクリプションプランがあります。
AppSheet Free は、個人利用やプロトタイプ開発、テスト、個人間の共有など、特定の用途に限り無料でAppSheetの機能を利用できるプランです。
AppSheet Starter は、AppSheet 無料プランの上位プランであり、無料プランに比べてより多くのユーザーでの利用、基本的な自動化機能を備えています。主に個人事業主や小規模チームでの運用や、基本的な業務効率化アプリケーション開発に適したプランです。
AppSheet Core は、AppSheet Starter の上位プランであり、AppSheet Starter に比べてより高度なアプリ機能、自動化機能、セキュリティ機能を備えています。主に中小規模の組織での運用や、より実用的なビジネスアプリケーション開発に適したプランです。
AppSheet Enterprise Plus は、AppSheet Core の上位プランであり、AppSheet Core に比べてより高度な機能、管理機能、セキュリティ機能を備えています。大規模な組織での運用や、複雑なアプリケーション開発に適したプランです。
- 参考 : サブスクリプションの選び方
- 参考 : AppSheet を無料で使用する(プロトタイプと個人用)
AppSheet Core
Google Workspace に無料付帯
AppSheet Core ライセンスは、主要な Google Workspace エディションでコアサービスとして登録されており、追加のサブスクリプションの登録不要で利用できます。
- 参考 : 組織で AppSheet を管理する
AppSheet Core が利用可能な Google Workspace エディションは以下の通りです。
- Business Starter
- Business Standard
- Business Plus
- Enterprise Starter
- Enterprise Standard
- Enterprise Plus
- Education Standard
- Education Plus
- Enterprise Essentials Plus
- Frontline Starter
- Frontline Standard
- Frontline Plus
- Google Workspace for Nonprofits
テンプレートから簡単にアプリ作成
AppSheet では、プログラミングの知識が無くてもドラッグ&ドロップ操作で直感的にアプリを開発できます。また、用途別に様々なテンプレートも用意されているので、それらを利用して開発することもできます。

Google Workspace アプリとの連携
AppSheet は、Gmail、Google Calendar、Google スプレッドシートなどの Google Workspace コアアプリをデータベースとして連携ができます。既存のデータを活用してアプリを構築できるため、手軽に業務の効率を高められます。
以下は、Googleの各種サービスと連携して実現できるアプリの例です。
Gmail との連携
例として、AppSheet の顧客管理アプリで設定したアクション(例:商談成立、見積もり提出後)に応じて、顧客へのお礼メールやフォローアップメールを Gmail で自動送信できます。
顧客との関係性を強化しつつ、人的ミスによるフォロー漏れを防ぎ、顧客満足度の向上に貢献します。
Google スプレッドシートとの連携
タスク名、担当者、期日、進捗状況などを Google スプレッドシートで管理し、AppSheet で担当者ごとのタスク表示、進捗更新、期日管理などの機能を持つアプリが作成できます。
各メンバーのタスク状況やプロジェクト全体の進捗を一目で把握でき、タスクの遅延防止に繋がります。
Google カレンダーとの連携
会議、セミナー、ワークショップなどのイベント情報を AppSheet で作成・管理し、その予定を Google カレンダーに自動的に登録・同期。参加者への招待、出欠確認なども AppSheet 上で完結できます。
イベントに関する情報を AppSheet で集約し、Google カレンダーでスケジュールとして可視化することで、情報管理の効率化に貢献します。
管理コンソールでの制御
管理者は、以下の操作を有効化または無効化できます。
- 外部のアプリユーザーとの間での AppSheet のアプリとデータベースの共有
- 外部アプリデータへの接続
- 外部の宛先に送られる自動化メール
- アプリの API を使用した外部統合
- Webhook 機能
参考 : AppSheet へのアクセスを管理する
AppSheet Enterprise Plus
最上位プラン
AppSheet Enterprise Plus は、AppSheet Core の最上位プランです。より高度な機能、管理機能、セキュリティ機能を備えており、大規模な組織での運用や、複雑なアプリケーション開発ができます。
また、Enterprise Plus には Gemini for App Creation、Gemini for AppSheet Solutions といった AI 機能も備わっており、生成 AI 補助のもとアプリを開発したり、AI 機能を使ったアプリを開発することができます。
その他にもバージョン管理、Active Directory や OpenID Connect との認証連携、チーム機能など、エンタープライズグレードの AppSheet 利用のための機能が充実しています。
- 参考 : サブスクリプションの選び方
Google グループを利用したユーザーのアクセス制御
AppSheet ではデフォルトですべてのユーザーでアプリの作成ができますが、Google グループを使用することでアプリの作成を行うユーザーを限定できます。
Google グループで「アプリ作成を許可する」メンバーが所属するグループを作成し、AppSheet に統合することで Google Workspace 内でアプリの開発者/利用者を分けて運用できます。
多様なデータソースとの連携
複数のクラウドベースのデータソースや大規模なデータベースと接続することで、大量のデータを活用したアプリを開発できます。
AppSheet で Google スプレッドシートをデータソースとして使用する場合、サポートされる行数は最大100,000行です。しかし、AppSheet Enterprise Plus ライセンスでは以下の大規模データソースと接続できるため、より大規模なデータセットを利用できます。
- Apigee
- AppSheet API
- AWS DynamoDB
- BigQuery
- MariaDB
- MySQL
- OData
- オンプレミス データベース
- Oracle
- PostgreSQL
- Salesforce
- SQL Server
参考 : サブスクリプションの選び方
OCR 機能
光学文字認識 (OCR) 機能を利用し、画像データや手書き文字から文字情報を読み取り、テキストデータとして抽出できます。例えば、複数の名刺や請求書をカメラで撮影し、抽出したデータをフォームに入力することなどができます。
AppSheet の OCR 機能を使用すると画像からフォームに自動的に入力できるため、データ入力にかかる時間を短縮できます。
- 参考 : 光学式文字認識(OCR)
チームへのリソース共有
AppSheet Enterprise Plus では、組織で作成したサンプルアプリの共有ができます。チーム内で共有することで開発時間の短縮や、作成するアプリの品質向上に繋がります。
また、AppSheet Enterprise Plus では MySQL などのクラウドデータベースや、Google スプレッドシートなどへの接続設定を共有できます。チーム全体が同じデータソースを利用することで、データソースの設定時間を削減でき、接続情報を管理できるためセキュリティの向上に繋がります。
- 参考 : リソースをチームと共有する
組織全体のガバナンス強化
AppSheet Enterprise Plus では、組織全体の AppSheet 利用に関する詳細なルール (ガバナンスポリシー)を管理者が一元的に設定できます。AppSheet Core でも一部の制御は可能ですが、Enterprise Plus ではより細かな設定が可能です。
例として、組織として許可したデータソース (特定のデータベースやクラウドストレージのフォルダなど)以外への接続を禁止し、接続可能なデータソースを制限できます。 これにより、情報漏洩リスクが低減できます。
- 参考 : ガバナンス ポリシーを定義する
外部IDプロバイダ (IdP)との連携による高度な認証
AppSheet Enterprise Plus では、Okta や Azure AD (Active Directory) など、企業で既に利用している外部のIDプロバイダ(IdP)と連携したシングルサインオン(SSO)環境を構築できます。
AppSheet Core でも Google Workspace アカウントでの認証が基本ですが、Enterprise Plus を利用することで、従業員は普段利用しているIDとパスワードで AppSheet アプリにアクセスでき、 IdP側で設定されている多要素認証を AppSheet 利用時にも適用できます。
これらにより、ユーザーの利便性を損なうことなく、企業全体の認証ポリシーに準拠した強固なアクセス管理が可能です。
- 参考 : Active Directory を使用してユーザー アクセスを制御する
- 参考 : Okta を使用してユーザーのアクセスを制御する
- 参考 : OpenID Connect を使用してユーザーのアクセスを制御する
詳細な監査ログと利用状況モニタリング
AppSheet Enterprise Plus では、アプリの利用状況やデータ変更に関する詳細な監査ログを取得し、管理者が確認・分析できます。これにより、いつ、誰が、どのような操作を行ったかを追跡し、セキュリティインシデント発生時の原因究明や不正アクセスの検知に役立ちます。
具体的には、以下のような情報が記録されます。
- アプリの起動、同期、データ変更(追加・更新・削除)の履歴
- 自動化の実行履歴
- エラーの発生状況
これらの監査ログは、Google Cloud の BigQuery にエクスポートしてより長期間の保管や高度な分析を行うこともできます。AppSheet Core でも基本的なエラーログなどは確認できますが、Enterprise Plus ではより詳細な確認が可能です。
Gemini との統合
Enterprise Plus では、Google の生成 AI モデルである Gemini と統合されています。
Gemini for App Creation は、AI 補助のもとアプリを開発できる機能です。自然言語でアプリのアイデアやビジネスプロセスの説明をするだけで、推奨されるテーブルと列を提案するなど、アプリ開発を AI が補助します。
Gemini for AppSheet Solutions は、アプリの中で AI を利用できる機能です。Gemini for AppSheet Solutions を使うと、画像から情報を抽出したり、PDF ドキュメントを処理したり、情報を分類したりできます。2025年6月現在は Preview です。
松本 迅人 (記事一覧)
クラウドソリューション部 クラウドサポート課
栃木県出身。6年間製造関係の会社に在籍し、その後IT業界にシフト。
現在は Google Workspace を中心にカスタマーサポートに従事。
趣味はキャンプ、カメラ、エレキベース、バイク