G-gen の杉村です。2025年10月、Google の AI アシスタントサービス Google Agentspace が Gemini Enterprise に名称変更され、追加の機能とともに再発表されました。変更後のライセンス体系等の違いについて解説します。

Gemini Enterprise とは
Gemini Enterprise(旧称 Google Agentspace)は、Google の AI アシスタントサービスです。Google Workspace や Microsoft 365、Confluence や Salesforce などの外部サービスに接続して、横断検索を行ったり、検索結果を取得して AI が要約・生成・分析などのタスクを行います。また NotebookLM Enterprise、Deep Research、独自開発エージェントの統合など各種付加機能も持っています。これらを活かし、Gemini Enterprise は企業のための AI プラットフォームとして機能します。
Gemini Enterprise は、2024年12月に Google Agentspace という名称で Early Access 提供が開始され、2025年7月31日に一般公開(GA)されました。そして2025年10月10日、現在の名称である Gemini Enterprise に改称し、追加の機能とともに再発表されました。
Gemini Enterprise は以下の記事で詳細に解説されていますので、参考にして下さい。
Gemini Enterprise の発表
発表内容
日本時間2025年10月10日、Google Agentspace は、Gemini Enterprise に改称のうえ、新サービスとして再発表されました。同日付で、公式ガイドなども名称が一新されました。
この再発表においては、特に以前の Google Agentspace には付属していなかった Gemini Code Assist Standard ライセンスが付与されるなど、追加の特典が利用可能になっています。また今後、様々な AI 関連機能が追加され、AI アシスタントのプラットフォームとして進化していくことが、Google によって示唆されています。
変更点
この再発表では、以前の Google Agentspace と比較して、以下のような変更が加えられます。
- Google Agentspace は Gemini Enterprise へ改名。ドキュメントや Web コンソール画面上の表記も変更になる
- サブスクリプション(ライセンス)体系が変更。特に Gemini Enterprise Standard 以上では Gemini Code Assist Standard ライセンスが付属
一方で、この再発表に伴い、基本的には Google Agentspace 時代からあった機能や契約に悪い影響はありません。Google からは以下のように通知されています。
- 一般提供(GA)済みの機能に、廃止や変更はない
- 既存のサブスクリプション契約は、期間が終了するまで条件や請求金額に変更はない
- サポートレベルに変更はない
- 既存機能を利用するにあたり、ユーザーが取るべきアクションは特にない
よって、従来の Google Agentspace ユーザーは大きく影響を受けずに、Gemini Enterprise を使い続けることができます。また、Google Agentspace の年間または3年間の長期サブスクリプションの契約者は、所定のルールで Gemini Enterprise にアップグレードすることも可能です。詳細は後述します。
ライセンス体系
Gemini Enterprise では、ライセンス契約にあたるサブスクリプションを購入して、利用ユーザー1人ずつにライセンスを割り当てる必要があります。
ライセンス体系の詳細は、以下の記事に2025年10月17日現在の最新情報に基づく解説を掲載しています。以下の解説をご確認いただきつつ、当記事を読み進めてください。
Gemini Enterprise への移行
Gemini Enterprise への改称に伴い、Google Agentspace の機能が廃止されたり変更されることはありません。既存の Google Agentspace ユーザーは、基本的には特になにもしなくてもそのまま Gemini Enterprise を使い続けることができます。購入済みのサブスクリプション(ライセンス)も、しばらくはそのまま利用可能です。
しかし、2025年12月31日以降、既存の Google Agentspace ライセンスのサブスクリプションは購入することはできなくなります。よって、月間サブスクリプションを購入していた既存の Google Agentspace ユーザーや、Google Agentspace の導入を検討していたが Gemini Enterprise への改称後(サブスクリプション体系変更後)に正式導入をするユーザーは、Gemini Enterprise の新しいサブスクリプション体系を理解して、移行パスを検討する必要があります。
サブスクリプション移行パス
イメージ図
以下は、旧来の Google Agentspace サブスクリプションの種類と、新しい Gemini Enterprise サブスクリプションの対応を表した図です。

Google Agentspace Enterprise からの移行
Google Agentspace Enterprise の移行先は、Gemini Business か Gemini Enterprise Standard が移行先として考えられます。
どちらを選択する場合も、Google Agentspace Enterprise には付属していなかった「ノーコードエージェントの開発機能(Agent Designer)」や「Google のプリメイドエージェント(Deep Research やアイデア生成エージェントなど)」が付属することになります。
また、Gemini Enterprise Standard を選択すれば、Gemini Code Assist Standard ライセンスも付属します。これは、アプリケーション開発者が使用できるコーディング補助エージェントのライセンスです。VSCode などの IDE で利用でき、コード生成、保管、コードの説明など、様々な機能が利用でき、開発スピードを大幅にアップします。
注意点として、Gemini Business は Google Cloud との連携ができません。VPC Service Controls や BigQuery との連携など、高度な機能が利用できなくなります。また Google Cloud コンソールからのオンライン購入ができないほか、G-gen などの Google Cloud 販売パートナーからの購入もできません。Gemini Business は Gemini Enterprise を初めて導入するライトユーザー向けにハードルを下げた廉価版と考えることができることから、既存ユーザーは Gemini Enterprise Standard 以上を検討することが推奨されます。
Google Agentspace Enterprise Plus からの移行
Google Agentspace Enterprise Plus からの移行先は、Gemini Enterprise Standard か Gemini Enterprise Plus が候補となります。
いずれを選択した場合でも、Gemini Code Assist Standard ライセンスが新しく付与されます。
Gemini Enterprise Standard を選択した場合は、ユーザー1人あたりに割り当てられるストレージ量が減少するのと引き換えに、サブスクリプション料金が安価になります。
Gemini Enterprise Plus を選択した場合は、今後(2025年10月17日現在)機能追加が見込まれる、高度な管理機能が利用可能です。この管理機能には、ノーコードエージェントを従業員へ配布したり管理したりする機能などが考えられます。ただし2025年10月17日現在、「高度な管理機能」に関して、具体的にどのような機能が追加されるかなど、公式なロードマップの発表がないため、現在では Standard と Plus の機能差異が小さいものとなっています。詳細は Google のセールス担当者等にお問い合わせください。
Google Agentspace Frontline からの移行
Google Agentspace Frontline の移行先は、Gemini Enterprise Frontline になります。サブスクリプションに含まれる内容に大きな変化はありません。ただし、サブスクリプション料金に違いがあります。

年間サブスクリプションのアップグレード
Google Agentspace の年間または3年間のサブスクリプションを既に購入したユーザーについては、契約期間中は、追加シートをこれまで同じ形態で追加購入可能です。
また、希望すれば、Google Agentspace の年間サブスクリプションを、追加コストなしで Gemini Enterprise にアップグレードできます。またその場合でも、契約期間の最初の1年間が終わるまでの間、従来と同じ金額で追加ライセンスを購入できます。アップグレードすることで Gemini Enterprise に含まれる Gemini Code Assist Standard ライセンスなどの追加の恩恵を得ることができます。
移行先のサブスクリプションがどれになるのか、またどのような手続きになるかなど、詳細は Google Cloud または Google Cloud 販売パートナーのセールス担当者にお問い合わせください。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO
元警察官という経歴を持つ IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。
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