G-gen の杉村です。2025年4月のイチオシ Google Cloud(旧称 GCP)アップデートをまとめてご紹介します。記載は全て、記事公開当時のものですのでご留意ください。
- はじめに
- Google Cloud Next '25 が開催
- IAM の基本ロールが刷新(Preview)
- BigQuery のユーザー定義関数(UDF)が Python に対応(Preview)
- BigQuery ML で 生成 AI 関数 AI.GENERATE_* が登場(Preview)
- Vertex AI Agent Builder が AI Applications に改名
- BigQuery マテリアライズドビューのスマートチューニングが改善
- Cloud Run が Identity-Aware Proxy(IAP)をネイティブにサポート(Preview)
- Google ドキュメントと Gmail の Help me write 機能が日本語に対応
- Gemini アプリの Deep Research で Gemini 2.5 Pro が利用可能に
- Gemini in BigQuery の料金体系が改定
- Google Docs のコードブロックが追加のプログラミング言語に対応
- Gemini 2.5 Flash が利用可能に(Preview)
- BigQuery に費用ベースの CUD(確約利用割引)が登場
- Google グループが Looker グループにミラーできるように
- Firestore に確約利用割引(CUD)が登場
- Compute Engine で C4D マシンタイプが登場(Preview)
- BigQuery でクエリごとに reservation を指定可能に(Preview)
- BigQuery で Reservation-based fairness が利用可能に(Preview)
- データキャンバスで Gemini assistant が利用可能に(Preview)
- 組織外から共有されたファイルを開いたときに警告を表示
- NotebookLM の「音声概要」が日本語に対応
- Google Vids がほとんどのエディションに付帯
- Looker で Period-over-period measures(前期比メジャー)が利用可能に
- Looker(Google Cloud Core)で手動バックアップが利用可能に
- Dataplex automatic discovery in BigQuery が GA
はじめに
当記事では、毎月の Google Cloud(旧称 GCP)や Google Workspace(旧称 GSuite)のアップデートのうち、特に重要なものをまとめます。
また当記事は、Google Cloud に関するある程度の知識を前提に記載されています。前提知識を得るには、ぜひ以下の記事もご参照ください。
リンク先の公式ガイドは、英語版で表示しないと最新情報が反映されていない場合がありますためご注意ください。
Google Cloud Next '25 が開催
Google Cloud の旗艦イベントである Google Cloud Nextが、2025年4月9日(水)から11日(金)までの3日間、米国ラスベガスで開催。
キーノートでは、重要な技術アップデートが発表された。
G-gen 社は、現地から多数のセッションレポートを発表。関連記事は以下のリンクから参照。
IAM の基本ロールが刷新(Preview)
Basic roles (2025-04-01)
Google Cloud の基本ロール(Basic roles)が新しくなる(Preview)。
- 旧 : Owner (roles/owner)、Editor (roles/editor)、Viewer (roles/viewer)
- 新 : Admin (roles/admin)、Writer (roles/writer)、Reader (roles/reader)
内容の詳細は、以下の解説記事も参照。
BigQuery のユーザー定義関数(UDF)が Python に対応(Preview)
User-defined functions in Python (2025-04-02)
BigQuery のユーザー定義関数(User-defined functions、UDF)で Python がサポートされた(Preview)。
これまで BigQuery UDF で利用できる言語は SQL と JavaScript のみだったが、新たに Python が加わった。これにより、使い慣れた Python のライブラリやロジックを BigQuery のクエリ内で直接利用できるようになり、より複雑なデータ処理や分析が可能に。
BigQuery ML で 生成 AI 関数 AI.GENERATE_* が登場(Preview)
Generative AI functions (2025-04-04)
BigQuery ML において、Vertex AI の Gemini モデルを利用してテキスト分析を行い、指定されたデータ型で結果を返す新しい組み込み関数群 AI.GENERATE_*
が登場(Preview)。
利用可能な関数は以下の通り。
AI.GENERATE_TEXT
AI.GENERATE_BOOL
AI.GENERATE_INT
AI.GENERATE_DOUBLE
AI.GENERATE_TABLE
これらの関数の利用で、SQL クエリ内で直接、テキストからのキーワード抽出、要約、感情分析などの自然言語処理タスクを実行し、その結果を構造化データとして取得することが容易になる。
-- AI.GENERATE を使用した例 (キーワード抽出) SELECT city, AI.GENERATE( ('Extract the key words from the text below: ', city), connection_id => 'us.test_connection', endpoint => 'gemini-2.0-flash').result FROM mydataset.cities;
Vertex AI Agent Builder が AI Applications に改名
AI Applications release notes (2025-04-02)
Vertex AI Agent Builder の名称が AI Applications に変更された。
Google Cloud コンソールや公式ドキュメント上の表記は、順次変更される。なお、API エンドポイント名(discoveryengine.googleapis.com
)などは変更されない。
このサービスは、これまでにも何度か名称変更が行われている:
- Preview 時 : Generative AI App Builder(Gen App Builder)
- 2023年8月(GA 時): Vertex AI Search and Conversation
- 2024年4月 : Vertex AI Agent Builder
- 2025年4月 : AI Applications
BigQuery マテリアライズドビューのスマートチューニングが改善
Smart tuning (2025-04-07)
BigQuery のマテリアライズドビューにおけるスマートチューニング機能が改善された。
スマートチューニングは、クエリ実行時にマテビューを利用した方が効率が良い場合に、BigQuery が自動的にクエリを書き換えてマテリアライズドビューを参照する機能。
これまでは、スマートチューニングが適用されるためには、クエリ対象のベーステーブルとマテビューが同じデータセット内に存在する必要があったが、今回のアップデートにより、同じプロジェクト内にあれば適用されるように条件が緩和された。これにより、より多くのクエリでスマートチューニングによるパフォーマンス向上が期待できる。
Cloud Run が Identity-Aware Proxy(IAP)をネイティブにサポート(Preview)
Configure Identity-Aware Proxy for Cloud Run (2025-04-07)
Cloud Run サービスが Identity-Aware Proxy(IAP)をネイティブにサポート(Preview)。
これにより、外部ロードバランサーを設定することなく、Cloud Run サービスへのアクセスに対して Google アカウント認証(組織アカウントのみ)を簡単に適用可能に。従来、Cloud Run で IAP を利用するには外部 HTTP(S)ロードバランサーの設置が必須だったが、このアップデートで構成が大幅に簡素化される。
ただし、以下の制限事項がある。
- Google Workspace または Cloud Identity による組織(Organization)が必要
- 認証できるのは、同じ組織に所属する Google アカウントのみ
- カスタムドメインを利用する場合は、引き続きロードバランサーが必要
この機能の詳細や設定方法については、以下の記事も参照。
Google ドキュメントと Gmail の Help me write 機能が日本語に対応
Help me write in Google Docs now available in four additional languages (2025-04-07)
Help me write in Gmail now available in Japanese and Korean (2025-04-07)
Google ドキュメントおよび Gmail に搭載されている Gemini 機能「Help me write」が日本語に対応。
この機能を使うと、選択したテキストに対して、タイポの修正、文章のトーン調整(長くする、短くする、フォーマルにするなど)、リフレーズ(言い換え)などを Gemini に指示できる。文章作成を効率化し、より質の高いドキュメントやメールを作成するのに役立つ。
この機能は、2025年4月7日から順次ロールアウトされており、個人向け無償アカウントを除くほぼ全ての Google Workspace エディションで利用可能。
Gemini アプリの Deep Research で Gemini 2.5 Pro が利用可能に
Google Gemini App 公式 X アカウント (2025-04-09)
Gemini ウェブアプリの Gemini Advanced で利用可能な Deep Research 機能において、基盤モデルとして Gemini 2.5 Pro が利用可能になった。
Deep Research は、与えられたトピックについて Gemini が Web 上の情報を調査し、詳細なレポートを生成してくれる機能。より高性能な Gemini 2.5 Pro が利用可能になったことで、さらに質の高い調査レポートが期待できる。
Gemini in BigQuery の料金体系が改定
Gemini in BigQuery Pricing Overview (2025-04-09)
Gemini in BigQuery の料金体系が改定された。
従来は Gemini Code Assist Enterprise または BigQuery Enterprise Plus エディションの購入が必要だったが、新体系ではオンデマンドおよび全ての BigQuery エディションで利用可能になった。
Google Docs のコードブロックが追加のプログラミング言語に対応
Google Docs code blocks now available in additional programming languages (2025-04-14)
Google Docs のコードブロック機能が、以下の追加プログラミング言語に対応。
- C#
- Go
- Kotlin
- PHP
- Rust
- TypeScript
- HTML
- CSS
- XML
- JSON
- Protobuf
- Textproto
- SQL
- Bash/Shell
Gemini 2.5 Flash が利用可能に(Preview)
Gemini 2.5 Flash (2025-04-17)
Vertex AI で Gemini 2.5 Flash が利用可能になった(Preview)。
テキスト、コード、画像、音声、動画を入力として受け付け、テキストを出力する。思考に使うトークン数を制御できる Thinking Budget(思考予算)機能があり、予算を0に設定することも可能。
BigQuery に費用ベースの CUD(確約利用割引)が登場
Committed use discounts (2025-04-21)
BigQuery に「費用ベースの確約利用割引(CUD)」が登場。1年または3年コミットで購入すると、以下の SKU に割引が適用される。
- BigQuery editions
- Composer 3(BigQuery engine for Apache Airflow とも呼ばれる)
- BigQuery governance
- BigQuery services
割引率は、1年コミットで最大10%、3年コミットで最大20%。
既存の Editions コミットメントの方が割引率は高いが、この費用ベース CUD は Composer や他の SKU にも適用される点と、リージョン全体に適用される点がメリット。
Google グループが Looker グループにミラーできるように
Mirror Google Groups (2025-04-22)
Looker(Google Cloud core)で、Google グループの所属メンバーを Looker のグループにミラーできるようになった。これにより、Looker 上で個別にユーザーを設定する手間が省力化できる。
Firestore に確約利用割引(CUD)が登場
Committed use discounts (2025-04-22)
Firestore(Native mode / Datastore mode)で費用ベースの確約利用割引(CUD)が登場。Read/Write/Delete オペレーション料金を1年または3年コミットメントで購入することで割引が適用される。
- 1年コミットメント : 20%割引
- 3年コミットメント : 40%割引
この CUD は請求先アカウントに紐づく費用ベースのものであり、全リージョンに適用される。
Compute Engine で C4D マシンタイプが登場(Preview)
C4D machine series (2025-04-22)
Compute Engine で C4D マシンタイプが登場(Preview)。
第5世代 AMD EPYC Turin プロセッサを搭載し、Titanium アーキテクチャを採用。前世代の C3D と比較して性能が 30% 向上したとされ、Cloud SQL for MySQL で 1 秒あたりのクエリ数が 56% 増加、Memorystore for Redis ワークロードで 1 秒あたりのオペレーション数が 38% 増加とされる。※2025-04-24現在、Cloud SQL ではまだ利用できない点に注意
Web アプリケーション、ゲーム、AI 推論など、汎用的な用途を想定。
BigQuery でクエリごとに reservation を指定可能に(Preview)
Flexibly assign reservations (2025-04-23)
BigQuery で、クエリ実行時に使用する reservation を明示的に指定できるように(Preview)。
従来はプロジェクトに1つだけ設定された reservation が使用された。これによりプロジェクトを作成せずに、より柔軟に reseration を利用できるようになった。
BigQuery で Reservation-based fairness が利用可能に(Preview)
Reservation-based fairness (2025-04-23)
BigQuery で Reservation-based fairness が Preview。この機能をオンにすると、アイドルスロットの分配方法が変わる。詳細はドキュメントを参照。
データキャンバスで Gemini assistant が利用可能に(Preview)
Work with a Gemini assistant (2025-04-24)
BigQuery データキャンバスで Gemini assistant が利用可能に(Preview)。
自然言語で指示すると、対象テーブルのサジェスト、クエリ作成、グラフの描画など、データ探索から分析・可視化までGeminiがアシストしてくれる。Gemini はテーブルのメタデータを読むため、メタデータ整備が重要。
組織外から共有されたファイルを開いたときに警告を表示
Enhance Your Organization’s Security with Out-of-Domain File Warnings in Google Workspace (2025-04-28)
Google Workspace(Docs、Sheets、Slides)で組織外から共有されたファイルを開いたときに警告を出す設定が利用可能に。
デフォルトで有効化され、機密情報を誤って記載しないように、という意味の警告が出る。

NotebookLM の「音声概要」が日本語に対応
NotebookLM Audio Overviews are now available in over 50 languages (2025-04-29)
NotebookLM でポッドキャスト風音声を生成して概要を説明する「音声概要」が日本語を含む50以上の言語に対応した。英語以外の出力言語を指定できるようになり、流暢な日本語も生成可能になった。

Google Vids がほとんどのエディションに付帯
Expanding Google Vids to Business Starter, Enterprise Starter and Nonprofit customers (2025-04-29)
動画編集ツール Google Vids が Google Workspace Business Starter、Enterprise Starter、無償アカウントでも使えるように。
12ヶ月間は AI 補助機能も試用可能。従来は Business/Enterprise Standard 以上が必要だった。
Looker で Period-over-period measures(前期比メジャー)が利用可能に
Period-over-period measures in Looker (2025-04-29)
Looker で Period-over-period measures(前期比メジャー)が利用可能に。昨対比をメジャーとして簡単に作成できる。
以下は、LookML の定義の例(公式ドキュメントから引用)。
measure: order_count_last_year { type: period_over_period description: "Order count from the previous year" based_on: orders.count based_on_time: orders.created_year period: year kind: previous }
Looker(Google Cloud Core)で手動バックアップが利用可能に
Back up and restore a Looker (Google Cloud core) instance (2025-04-29)
Looker(Google Cloud Core)で手動バックアップおよびリストアが可能に。従来は24時間ごとの自動バックアップのみだった。
内部 DB 等のデータが保存される。現在では gcloud コマンドでのみ実施可能。
Dataplex automatic discovery in BigQuery が GA
Discover and catalog Cloud Storage data (2025-04-29)
Dataplex automatic discovery in BigQuery が Preview→GA。Cloud Storage バケットをスキャンして構造化データは BigLake table または External tableとして、非構造化データは Object table として自動作成。
Parquet、Avro、ORC、JSONL、CSV や一部の圧縮形式に対応。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長
元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。
Follow @y_sugi_it