Migrate for Compute Engineを解説

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G-gen の國﨑です。Google Cloud (旧称 GCP) には、 Google Cloud への移行を支援してくれる Migrate for Compute Engine という移行ツールがあります。

今回の記事は Migrate for Compute Engine について解説します。

Migrate for Compute Engine とは

Migrate for Compute Engine は Google Cloud が提供するサーバー移行ツールです。

対応している移行元として VMware vSphere 、 Amazon EC2 (AWS) 、 Virtual machine (Microsoft Azure) 環境があります。

このツールを使うことで、ダウンタイムを最小限にしながらサーバーを Google Cloud へ移行することが出来ます。

移行元にセットアップした Migrate Connector 等と呼ばれるツールがデータを継続的に Google Cloud へ転送してくれることで、移行が実現されます。

Migrate for Compute Engine v4 と v5 の違い

Migrate for Compute Engine には v4 v5 があり、それぞれできることが異なります (2022 年 7 月現在) 。

例えば v4 と v5 ではサポートされる移行元環境が異なります。

v4 では VMware 環境の他、 AWS 、 Azure のサーバーを移行可能です。

一方の v5 では、 VMware 環境のサーバーしか移行できません。

原則は、最新版である v5 を利用することが推奨 ですが、 AWS / Azure 環境のサーバーを移行したい場合は v4 を選択します。

当記事ではこれ以降、 v5 をベースに解説していきます。

環境構成

Migrate Connector

Migrate for Compute Engine (v5) では、移行元の vSphere 環境に Migrate Connector と呼ばれるツールをデプロイする必要があります。

同ツールをデプロイするためには、公式サイトの OVA ファイルを使います。

通信要件

Migrate Connector は Google Cloud の API との間に HTTPS (443/tcp) を使用して通信を行い、データを転送します。

そのため移行元 vSphere 環境の Migrate Connector からインターネット経由で Google Cloud の API に到達する経路を確保する必要があります。

ただし Cloud VPN (IPSec) や Cloud Interconnect (専用線) を経由して通信させることも可能です。

画像は 公式ドキュメント から引用

料金

Migrate for Compute Engineは無料で利用できます。

ただし、データ移行に必要なストレージなど、 Migrate for Compute Engine 以外の Google Cloud 利用料金が発生することにご注意ください。以下のような料金が発生します。

No 項目名 説明
1 Compute Engine 移行先 VM の関連リソースの料金。永続ディスク等含む
2 Cloud Storage 移行元環境から実施される 増分レプリケーションを蓄積するための費用
3 スナップショット 定期的に VM の状態を保存するために使用されます。

移行プロセス

Migrate for Compute Engine を使ったサーバー移行は、以下の 6 つのプロセスに分けられます。

1. オンボード

移行する対象 VM を選択するプロセスです。

Google Cloud コンソールに vSphere データセンター内のすべての VM が表示されるので 移行対象となる VM のみ を選択します。

2. レプリケーション

移行元 VM から Google Cloud にデータをレプリケート (複製) するプロセスです。

データ レプリケーションは、最終的なカットオーバーまたは移行中止まで、バックグラウンドで継続的に行われます。

レプリケーションされたデータは安価なストレージである Cloud Storage に保存されます。 この Cloud Storage バケットはコンソールからは見えませんが、バックエンドでデータがコピーされ続けています。

3. 移行設定

Compute Engine の設定を決定するプロセスです。

VM を配置するプロジェクト、ネットワーク、インスタンスタイプ、メモリなど Compute Engine インスタンスの 詳細な設定値を決定 します。

4. テストクローン

正常に移行できるか、テストするプロセスです。

Cloud Storage に溜まっているレプリケーションデータから Compute Engine インスタンスをテスト的に生成 (クローン) します。このインスタンスで、正常にインスタンスが動作するかのテストを実施することができます。

このテストは必須ではありませんが、 強く推奨 されています。いきなりのカットオーバーだと、正常に VM が起動するか、また起動してもアプリケーションが正常に稼働するか分からないためです。

5. カットオーバー

最終的な移行と本番 VM のローンチ (起動) をするプロセスです。

以下の順序で実施されます。

  1. 移行元 VM の停止 (静止点が生まれる)
  2. 最終レプリケーション
  3. レプリケーション停止
  4. 移行先 Compute Engine インスタンス作成
  5. 移行元 VM のシャットダウン

6. 移行完了

移行完了後、ファイナライズ (クリーンアップ) を実施するプロセスです。

ファイナライズの中では、移行に利用した Cloud Storage のデータを削除するなどの最終処理が行われます。

ファイナライズ実施前で有ればデータが残っているため、レプリケーションをやりなおすこともできますが、 Cloud Storage に残っているデータの課金が発生し続けることにご留意ください。

ユースケース

移行元が VMWare 環境であり、一定以上の台数のサーバー移行が必要な場合に Migrate for Compute Engine が活躍します。

また、継続的にデータのレプリケーションを行うため、ダウンタイムが最小限に抑えられるのも特徴です。

逆にサーバー台数が 1 台のみであったり、 VMWare 環境以外の移行元である場合にはサードパーティツールや Google Cloud の 他の移行方式 を検討することになります。

注意事項

  • Migrate for Compute Engine (v5) を利用できるリージョンは 公式ドキュメント 参照
    • asia-northeast1 (東京) および asia-northeast2 (大阪) は対応
  • VMware vSphere の バージョン 5.5 以降 をサポート
  • サポート対象の移行元 OS は 公式ドキュメント 参照
    • 例 : CentOS 6, 7, 8
    • 例 : RHEL 6, 7, 8
    • 例 : Windows Server 2008 R2 SP1, 2012, 2012 R2, 2016, 2019, 2022

國﨑 隆希(記事一覧)

クラウドソリューション部

2022年5月にG-gen にジョイン。前職までは物理・仮想環境を中心に業務に従事。 Google Cloud のスキルを身に着けるべく勉強中。