G-gen の杉村です。2023年10月のイチオシ Google Cloud アップデートをまとめてご紹介します。記載は全て、記事公開当時のものですのでご留意ください。
- はじめに
- Looker Studio と BigQuery のさらなる統合 (Private Preview)
- Cloud SQL で異エディション間でバックアップ→リストアが可能に
- Looker Studio Pro がユーザ単位で利用可能に
- BigQuery のリージョン間テーブルコピーが Private Preview
- 一部リージョンの Spanner がパフォーマンス改善
- Colab Enterprise が Preview -> GA
- Cloud Domains の一部機能が廃止
- Regional external Application Load Balancer で Cloud Armor が使用可能に
- プロジェクト管理者が予算アラートを作れるように (Preview => GA)
- BigQuery change data capture (CDC) が Preview => GA
- Cloud Run jobs の実行時のジョブ設定オーバーライドが Preview => GA
はじめに
月ごとの Google Cloud アップデートのうち、特にイチオシなものをまとめています。
ある程度の事前知識が必要な記載となっています。サービスごとの前提知識は、ぜひ以下の記事もご参照ください。
またリンク先の公式ガイドは英語版にしないと最新情報が反映されていない場合がありますためご注意ください。
Looker Studio と BigQuery のさらなる統合 (Private Preview)
BigQuery native integration in Looker Studio preview (2023/10/02)
Looker Studio と BigQuery の間で INFORMATION_SCHEMA
、execution graph
、Cloud Monitoring メトリクス
との統合が強化。BigQuery のシステムビューである INFORMATION_SCHEMA.JOBS
には looker_studio_report_id
や looker_studio_datasource_id
が記録されるようになる。
すなわち、どの Looker Studioレポートからクエリが発行されたかが分かるようになった。
どのレポートがどのくらい課金に影響しているか、の可視化が容易になる。
Cloud SQL で異エディション間でバックアップ→リストアが可能に
About restoring an instance (2023/10/02)
Cloud SQL で異なるエディション間 (Enterprise <-> Enterprise Plus) でバックアップ→リストアが可能になった。
既存の Enterprise インスタンスを容易に Enterprise Plus にアップグレードする一つの手段として考えられる。
Looker Studio Pro がユーザ単位で利用可能に
Looker Studio release notes (2023) - October 2, 2023 (2023/10/02)
Looker Studio Pro がユーザ単位で利用可能になった。従来は「組織単位で有効化」のみであり、MAU 全員に課金されてしまった(MAU = Monthly Active User)。
料金は $9 / user / month。
さらに従来はオフラインオーダー(都度、営業を介して注文)だったが、、コンソールからユーザ自身で Looker Studio Pro へアップグレード可能になった。
Looker Studio Pro の詳細な解説は以下を参照。
BigQuery のリージョン間テーブルコピーが Private Preview
リージョン間でテーブルをコピーする (2023/10/04)
BigQuery でテーブルのリージョン間コピーが Private Preview に。
Private Preview のため、利用には申込みが必要。
これまでは同一リージョン間でしかテーブルをコピーできないため BigQuery Data Transfer Service を使うなど工夫する必要があった。
一部リージョンの Spanner がパフォーマンス改善
Cloud Spanner is now half the cost of Amazon DynamoDB, and with strong consistency and single-digit ms latency (2023/10/12)
大阪リージョンを含む一部のリージョンの Spanner が、コスト据え置きのままパフォーマンスが向上。Read & Write の QPS が従来の 1.5 倍になる。
対象リージョンは大阪、台湾、ムンバイ、オランダ等で、今後拡大予定。
Cloud Spanner の詳細な解説は以下を参照。
Colab Enterprise が Preview -> GA
Introduction to Colab Enterprise (2023/10/11)
Colab Enterprise が Preview -> GAに。
Colab Enterprise はフルマネージドな Notebook。Vertex AI や BigQuery とのシームレスな統合や Duet AI によるコーディング補助などが最低限の管理コストで手に入る。類似サービスで Vertex AI Workbench がある。
なお Colab Enterprise と Vertex AI Workbench のどちらを選ぶかは公式ドキュメント)に以下のように記載されている。
- Colab Enterprise: 優先事項が他のユーザーとコラボレーションし、インフラストラクチャの管理に時間を費やすことを避けることである場合、Colab Enterprise が最適な選択肢となる可能性があります。
- Vertex AI Workbench: 優先事項が制御とカスタマイズ性である場合、Vertex AI Workbench が最適な選択肢となる可能性があります。
Cloud Domains の一部機能が廃止
Cloud Domains feature deprecation (2023/10/20)
Squarespace 社が Google Domains を買収したため Google Cloud プロダクトである Cloud Domains も影響を受ける。
ドメインの管理機能は引き続き利用できるが、主に DNS 関連機能が影響を受ける。以下のドキュメントで、いつ何の機能が影響されるのか確認可能。
Regional external Application Load Balancer で Cloud Armor が使用可能に
Regionally scoped security policies (2023/10/20)
Cloud Armor (Google Cloud のフルマネージド WAF) が Regional external Application Load Balancer でも使えるようになった (Preview => GA)。
これまで Cloud Armor は Global なロードバランサでしか利用できなかったが、今後はネットワーク料金を抑えつつWebアプリをセキュアにできる。
プロジェクト管理者が予算アラートを作れるように (Preview => GA)
Create, edit, or delete budgets and budget alerts (2023/10/23)
プロジェクト管理者・編集者が予算アラートを作れるように (Preview => GA)。
これまでは「請求先アカウント管理者」でないと予算アラートが作れなかったが、今後はプロジェクトレベルで予算アラートが作成できるようになった。
請求先アカウントの仕組みについては以下を参照。
BigQuery change data capture (CDC) が Preview => GA
Stream table updates with change data capture (2023/10/31)
BigQuery change data capture (CDC) が Preview => GA。
BigQuery にリアルタイムでデータを流し込む際、複雑な MERGE 構文を使わなくとも UPSERT/DELETE を含む更新が可能に。max_staleness
設定により反映インターバルを調整し、パフォーマンス調整も可能。
※名称から誤解しやすいが BigQuery のデータ変更をキャプチャする仕組み、ではないため注意。
Cloud Run jobs の実行時のジョブ設定オーバーライドが Preview => GA
Override job configuration for a specific execution (2023/10/31)
Cloud Run jobs が、ジョブ実行にジョブ設定をオーバーライドできるように(Preview => GA)。オーバーライド可能なパラメータは以下の 4つ。
- コンテナのエントリポイントとなるコマンドに渡す引数
- 環境変数
- タスク並列実行数
- タスクのタイムアウト
当アップデートは以下の記事で詳細に解説している。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長
元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 12資格、Google Cloud認定資格11資格。X (旧 Twitter) では Google Cloud や AWS のアップデート情報をつぶやいています。
Follow @y_sugi_it