Cloud Storageへのデータ転送で課金爆死してしまった件

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G-genの田中です。当記事では、Cloud Storage を利用する中で、意図していない高額の請求が発生してしまった事例について解説していきます。

はじめに

背景

今回、G-gen でサポートさせて頂いているお客様が Storage Transfer Service を利用して Cloud Storage へデータ移行を行ったところ、3日間で数十万円の課金が発生してしまったという事件があり、注意喚起のために記事化させて頂くことになりました。

本記事は、お客様名の許諾を得た上で、実際に起きた内容を少し改変して記事化しました。お客様の社内事情のため数値等を事実とは違うものにして記載していますが、記事の目的に沿うように、重要なエッセンスには影響しないよう改変してあります。

Cloud Storage とは

Cloud Storage とは Google Cloud (旧称 GCP) の容量無制限・低価格・堅牢なオブジェクトストレージサービスです。Google Cloud Storage を略して GCS と呼ばれることもあります。

データは少なくとも 2 つ以上のゾーンで冗長化され 99.999999999%(イレブンナイン)の堅牢性を誇ります。詳細は以下の記事もご参照ください。

blog.g-gen.co.jp

Cloud Storage の料金

Cloud Storage は、安価であることが特徴です。東京リージョンの Standard Storage のデータ保管料金は2023年11月現在で $0.023 (GB/月) です。ドル・円レートにもよりますが概ね 1 TB で3,000円〜3,500円程度と認識すれば良いでしょう。

ただし Cloud Storage の料金はデータ保管ボリュームだけでなく、API リクエスト回数など、複数の軸で課金されます。

最新の料金は以下の料金ページをご参照ください。

Storage Transfer Service とは

Storage Transfer Service は Google Cloud サービスの1つで、異なるストレージ間で自動的にデータを移行するためのツールです。

オンプレミスのデータセンター、他のクラウドプロバイダー等の異なるデータソースから、高い信頼性で迅速に Cloud Storage へデータを移行できます。

事件のあらまし

背景

本来実施したかったことは「Google Drive 内の約 6TB のファイルを Cloud Storage にバックアップしたい」ということでした。

お客様は、当初は「データ量が 6TB なので、2万円程度のデータ容量課金が発生する程度だろう」と試算し、本作業を実施しました。

落とし穴

このバックアップ作業には、大きな落とし穴がありました。

それはファイル数です。これを課金体系の観点から正しい言い方をすると「API コール数」です。

前述の通り Cloud Storage ではデータサイズの他に、データの読み込みや書き込みといった API コールの数に応じて課金されます。今回のような作業では Storage Transfer Service が Cloud Storage にデータを書き込むため、その際に API コールと課金が発生します。

莫大な課金の発生

あとで分かったことですが、今回の件では Google Drive の中に1ファイルあたり数バイトのログファイルが約8億個ありました。

ファイルサイズは約 6TB のためデータ保管料金は当初見積もった通り「2万円程度」でしたが、約8億個のファイルを書き込むために約8億回の Cloud Storage API 書き込みオペレーション料金が発生してしまいました。

Standard Storarge への書き込みは、1,000回あたり$0.005です(Archive Storage への書き込み等であれば、さらに高価になります)。8億回であれば $4,000(約580,000円)となります。これが、課金の原因でした。

後日譚

後日お話をお伺いした所、この作業を行った担当者様は入社2ヶ月ほどで、前任担当者からは膨大なファイルサイズについては引き継ぎを受けていませんでした。データサイズから想像できないファイル数が存在したことが、この事案を引き起こしたと言えます。

Cloud Storage の利用料金はデータ保管ボリュームだけでなく、API リクエストの回数による課金も発生することを念頭に置いて利用することが大切だと、改めて実感する事例となりました。

また、Google Cloud には課金サポートが用意されており、意図しなかった課金には救済措置が取られる可能性がゼロではありません。課金サポートは Google Cloud カスタマーケアに加入していなくても、全てのユーザが無料で利用可能です。

田中 祐平 (記事一覧)

ビジネス推進部 営業1課

2022年8月よりG-gen にジョイン。
大手製造の販売会社から、Google専業の営業へ。広島県在住でGoogle Workspaceをメインに活動中。週末はキャンプで山に籠もってます。