G-gen の杉村です。Google Cloud や Google Workspace といったクラウドサービスと、「英語」という言語の関係性について、またクラウド利用にあたっての言語の違いに関する注意点等について解説します。

クラウドと英語
Google Cloud や Google Workspace といったクラウドサービスと、「英語」という言語は深い関係性を持ちます。多くのクラウドサービスで、ユーザーインターフェイスや公式ドキュメント、また新機能が第1に対応する言語は英語です。特に近年は生成 AI 関係のサービスや機能においては、リリース直後はまず英語のみが対応し、他の言語がそれに追随するといった状況が見られます。
その理由として、まず Google Cloud、Google Workspace、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure といった主要なパブリッククラウドサービスは、いずれもアメリカ合衆国出身の企業が開発したものであるからという点が挙げられます。開発者や、サービスを最初に利用するユーザーは、英語を母語とする人々です。
次に、市場規模も理由の1つです。英語は実質的に世界で最も多く話者を持つ言語であることから、最も優先すべき言語となります。クラウドサービスのローカライズ、特に日本語の対応は数か月遅れる場合もあります。
この状況から、クラウドサービスを利用するにあたって、日本語を母語とする人たちにとって注意すべき点が多々あります。当記事ではそのような注意点などについて解説します。
Google 公式ドキュメント
Google Cloud や Google Workspace の公式ドキュメントは、主として以下のウェブサイトに公開されています。
- Google Cloud 公式ガイド(https://cloud.google.com/docs?hl=ja)
- Google Workspace 管理者ヘルプ(https://support.google.com/a/?hl=ja)
これらのドキュメントでは、英語版のドキュメントに最も新しい情報が掲載されており、日本語への翻訳は遅れる場合が多く見られます。同じ URL の同一ページでも、英語版に切り替えると、日本語版とは異なる情報が表示される場合があります。英語版と日本語版でで掲載情報が異なる場合、正しい情報は英語版であることに留意してください。
特に、サービスのアップデートが頻繁に行われる生成 AI 関連サービスや機能においては、最新情報や正しい情報を得るために、可能であれば英語版ドキュメントを参照することが望ましいといえます。また、Preview 中だった機能が一般公開(GA)した場合なども、GA 直後は日本語版ドキュメントのみに「プレビュー」表記が残り、英語版ドキュメントからは表記が消えている、というケースもあります。日本語版ドキュメントと英語版ドキュメントでページ構成自体が異なっているケースもあります。
Google Cloud ドキュメントは、画面右上の地球儀マークから、言語を切り替えることができます。

Google Workspace ドキュメントは、画面の一番下までスクロールして最下部にあるセレクタで言語を切り替えることができます。

なお、Google Cloud・Google Workspace のいずれのドキュメントも、URL の末尾にクエリパラメータとして ?hl=en を付与すれば英語版ドキュメントが、?hl=ja を付与すれば日本語版ドキュメントが表示されます(クエリパラメータは、# で始まるアンカーよりも前に書きます)。
例
# 英語版ドキュメントへの URL https://cloud.google.com/resource-manager/docs/managing-notification-contacts?hl=en # 英語版ドキュメントへの URL(アンカーがある場合) https://cloud.google.com/resource-manager/docs/managing-notification-contacts?hl=en#notification-categories
生成 AI 関連機能
Google Workspace の生成 AI 関連などでは、まず英語のみが対応し、続けて他の言語が対応する例があります。以下は、その例です。
- 参考 : “Take notes for me” in Google Meet now captures “next steps”
- 参考 : Language expansion for “suggested next steps” when using “Take Notes for Me”
最初の記事は、Google Meet のウェブ会議で Gemini が議事録を作成してくれる Take notes for me 機能に関する2025年2月18日のリリースです。次の記事は、その約半年後の2025年8月7日に、Take notes for me 機能が日本語、韓国語、フランス語、スペイン語などを含む追加の言語に対応したことを発表する記事です。
同様に、Google スプレッドシートの AI 関数機能も、機能自体の発表(2025-06-25)から3ヶ月ほど遅れて、日本語等の追加の言語の対応が発表(2025-09-23)されました。
生成 AI は特に自然言語に関するタスクを得意としますが、品質が重視されるようなサービスでは、Google が調整に時間をかけるケースがあります。上記の議事録機能のほか、画像生成などに関しても、日本語対応には時間がかかりました。これは、一歩間違えればコンプライアンスや倫理問題に繋がりかねない言語間の違いを調整するために、Google が慎重に調整を行っているためと考えられます。
Google Workspace では、日本のユーザーでも、言語の個人設定で言語を切り替えることで、英語版のみに対応している機能を使えるようになるケースがあります。
Google Workspace の個人の言語設定を英語に変更するには、Gmail や Google ドライブなど Google Workspace のいずれかのアプリ画面を開いてから、右上のアバター画像をクリックし、「Google アカウントを管理 > 個人情報 > ウェブ向けの全般設定 > 言語」をクリックします。表示された設定画面で、英語が存在しない場合は「+ 他の言語を追加」をクリックして英語を追加し、メイン言語に設定します。

ただし、機能によっては「米国に居住するユーザーのみ利用可能」など、居住国で制限がされるケースもあるため、このような場合には言語設定を切り替えても利用することはできません。これは、欧州連合(EU)など特に法的規制が厳しい国のユーザーに対する対策などであると考えられます。
訳語の難しさと違い
Google Cloud においては、公式ドキュメントや Google Cloud コンソール(Web UI)を日本語で利用することができます。ただし、ときとして用語が日本語へ翻訳されたことで逆にわかりづらくなるようなケースもあります。
| 原語 | 日本語訳(ドキュメント) |
|---|---|
| Commited use discounts(CUD) | 確約利用割引(CUD) |
| BigQuery data preparation | BigQuery データの準備 |
| Privileged Access Manager Admin | 特権アクセス マネージャー管理者 |
また、特に IAM ロールの名称の翻訳でしばしば見られるのは、ドキュメント上の訳語と、Google Cloud コンソール上の訳語が異なるケースです。
例えば前掲の Privileged Access Manager Admin(roles/privilegedaccessmanager.admin)ロールは、公式ドキュメント上は「Privileged Access Manager 管理者」と記載されていますが、Google Cloud コンソール上は「特権アクセス マネージャー管理者」と表記されます。コンソール上で IAM ロールを付与しようとして「Privileged Access Manager 管理者」で検索しても、見つからないことになります。特に IAM ロールの場合、roles/ で始まる ID を使って識別するか、コンソールの言語設定を英語版に切り替えることで対策できます。
Google Cloud コンソールの表記を英語に切り替えるには、コンソール右上の三点リーダーから「設定(英語では Preferences)」を選び、「言語と地域」を選んで表示される設定画面で、英語を選択して保存します。米国英語である English (United States) と英国英語である English (United Kingdom) がありますが、特にこだわりがなければ米国英語を選択するのが無難でしょう。

認定資格
Google Cloud 認定資格も、特に新しいものはまず英語版のみが発表されます。日本語は比較的優遇されており、英語以外の言語では日本語が最も対応している認定資格が多いです。
2025年9月下旬現在、14個の Google Cloud 認定試験のうち、10個の試験が日本語に対応しています。逆に日本語以外では、スペイン語とポルトガル語が1資格(Cloud Digital Leader)、フランス語が2個の資格(Cloud Digital Leader と Associate Cloud Engineer)で対応しているのみです。日本がマーケットとして重視されている点と、「英語が苦手」な人が多い実態が考慮されているように思われます。
Google Cloud 認定資格試験の言語の対応状況については、以下の記事も参照してください。
杉村 勇馬 (記事一覧)
執行役員 CTO
元警察官という経歴を持つ IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。
Follow @y_sugi_it