生成AI「Gemini」をクラウドインテグレーター社員が活用した事例

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G-gen の杉村です。当社 G-gen では、Google の生成 AI サービスを積極的に業務で利用しています。本記事では、Gemini API や Gemini for Google Workspace を G-gen の従業員がどのように利用しているか、具体的な事例を交えて紹介します。

はじめに

本記事について

本記事では、G-gen 社内における具体的な Gemini の活用事例を紹介します。生成 AI の業務利用を意図している方や、Gemini の導入やさらなる活用を検討している企業の方の参考情報となることを目的としています。

G-gen の業務環境と Gemini

株式会社 G-gen は、Google Cloud・Google Workspace 専業のクラウドインテグレーターです。Google Cloud を使った開発やインフラ構築、顧客環境のセキュリティ強化、コスト削減など、さまざまな業務を行っています。また、Google Cloud・Google Workspace の請求代行サービスをご利用の場合、割引料金が適用されます。

G-gen は、社内に物理的なサーバーを一切保有せず、全従業員がリモートで勤務しています。そのため、日常業務のほぼすべてが Google Workspace 上で行われています。

このような当社環境において、Google Workspace に統合された AI 機能である Gemini for Google Workspace は、従業員の生産性向上に役立っています。Gemini for Google Workspace は、ほとんどの商用 Google Workspace エディション(Business Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plus など)に追加料金なしで含まれており、特別なセットアップなしで利用を開始できます。

以前は、Google Workspace で生成 AI 機能を利用するには、Gemini アドオンライセンスが必要でした。しかし2025年1月16日以降、アドオンライセンスが不要になり、ほとんどすべてのエディションにデフォルトで Gemini が組み込まれました。

Gemini の進化

2025年4月、Gemini 2.5 Pro の登場により、日本語の長文読解や生成、要約の精度が大幅に向上し、より多くの業務シーンで Gemini が利用されるようになりました。

早い段階で Gemini を試した方の中には、日本語の文章の生成や読解に不満を覚えた方もいるかもしれません。しかし Gemini 2.5 では精度が大幅に向上しており、業務レベルで利用可能になったといえます。G-gen でも、これまでよりも Gemini の活用の幅が広がっています。

また、Gemini for Google Workspace の各機能は、リリース当初は日本語に対応していない場合がありましたが、2025年5月現在ではほとんどの機能が日本語に対応しています(一部は Alpha 版)。

データの保護

Gemini for Google Workspace や、Gemini アプリ、Google Cloud の Gemini API などでは、入力されたプロンプトや出力されたコンテンツ、アップロードされたデータなどは、適切に保護されます。

これらの情報が、Google によってモデルのトレーニングに利用されたり、外部に流出することはありません。

Gemini アプリ

Gemini アプリとは

Google Workspace 統合機能に加え、スタンドアロンの Gemini アプリ(旧 Bard)も広く利用されています。Gemini アプリは、Web ブラウザやモバイルアプリでアクセスできる対話型 AI サービスです。自由な形式での質問応答、文章生成、アイデア出し、アプリ開発などに利用できます。

Gemini アプリでウェブアプリを開発(Canvas 機能)

特に G-gen では、ブラウザからアクセスして利用する Gemini ウェブアプリが多用されています。Google Workspace の場合、管理コンソールから従業員の Gemini の利用状況が確認できます。G-gen 社内では、Gemini for Google Workspace の各機能の中で Gemini アプリが最も利用頻度が高く、半数以上の従業員が日常的に利用しています。

生成や解説、要約

Gemini アプリに自然言語で指示をすると、文章の生成や解説、要約などが可能です。また、画像を生成させることもできます。知らない単語の意味を掴むためにも有用です。

Gemini アプリへの質問

和英翻訳や英和翻訳も可能です。英語の技術情報を解釈したり、海外の相手にメールを送る時などにも利用できます。特に、英語でのビジネスメールに慣れていない日本語話者にとっては、失礼がなく自然に見える文章の生成に役立ちます。

Gemini による翻訳

また Google スライドや Google ドキュメントなど、Google ドライブ上のファイルを指定して、それらに基づいた生成を行うこともできます。

スピーカーノートを Gemini アプリに生成させる

Gems を利用した特定タスクの効率化

Gemini アプリの Gems 機能を利用して、特定のペルソナやタスクに特化した指示(カスタム指示)をあらかじめ作成しておき、繰り返し行う作業を効率化できます。Gems は、特定の役割(例 : 翻訳アシスタント、コードレビュアー、ブログ記事のレビュアー)や目的に合わせた指示を保存しておき、ワンクリックで Gemini をそのモードで起動できる機能です。

blog.g-gen.co.jp

Gemini アプリの Gems 機能

Gems の編集画面

以下は、Gems の利用例です。

和英・英和翻訳 Gem

日本語の技術文書やメールの下書きを、自然な英語表現に翻訳するための Gem を作成し、海外パートナーとのコミュニケーションに利用しています。「英語が入力されれば日本語に、日本語が入力されれば英語に翻訳。必ず複数案を提示する」のようなプロンプトをあらかじめ登録しておくことで、このシステム指示を毎回入力する必要性がなくなります。

技術アップデート解釈 Gem

Google Cloud や Google Workspace の新機能リリースノートを読み込ませ、「このアップデートの重要な点は何か」「G-gen の顧客にどのような影響があるか」といった観点で要約・解釈させる Gem を利用し、最新情報のキャッチアップを効率化できます。

ブログ下書きレビュー Gem

社内の執筆ガイドラインに沿っているか、技術ブログの下書きをレビューさせます。Gemini アプリは長大なプロンプトを読み込ませることができるので、体裁ルールを指示するほか、模範的な記事の全文を1個、システム指示プロンプトに組み込んでおくことで、精度の高いレビューや訂正が可能です。

議事録整備 Gem

Google Meet では、Web 会議で発言された言葉を Google ドキュメントに文字起こしできます。この内容を整理して、議事録を作成する Gem を作成できます。「えーと」「あー」といったフィラーを削除したり、規定の形式に整理できます。

ブログ記事・ドキュメントの草案作成

G-gen Tech Blog の記事執筆や、新しい技術に関する調査レポート作成の初期段階で、Gemini アプリにテーマと構成案を伝え、草案を作成させることがあります。生成された内容を基に、エンジニアが専門的な知見や G-gen としての視点を加えて、記事を仕上げます。

前述の「ブログ下書きレビュー Gem」と同様に、体裁ルールや模範的な記事原稿をプロンプトに入れることで、精度が高い生成が可能です。なお模範的な記事をプロンプトに組み入れることは、一種の Few-shot prompting(プロンプトに少数の例を含めることで、精度を向上させるプロンプトエンジニアリング手法)といえます。

レビュー・アイデア出し

作成した文章やソースコード、設計案などを Gemini に提示し、改善点や別のアイデアがないか、壁打ち相手として利用します。客観的な視点からのフィードバックを得ることで、品質向上につなげます。

ソースコード生成

Python、Bash、SQL、Terraform などのソースコードを、自然言語の指示に基づいて Gemini が生成します。特定の作業で一時的に必要になる gcloud コマンドラインなども、生成させてすぐ利用することが可能です。

また Gemini アプリの Canvas 機能を使うと、生成 AI と対話しながら生成物を修正したり、JavaScript のソースコードの実行をブラウザ上でプレビューすることができます。Canvas の詳細は、Gemini の公式 note アカウントの以下の記事を参照してください。

Canvas でウェブアプリを開発

Deep Research による調査レポート

Gemini アプリの Deep Research は、複雑なトピックを掘り下げて理解することを支援する強力な機能です。Gemini がユーザーに代わって数十のウェブサイトを検索して、その内容を AI が分析し、長大なレポートを作成します。

Deep Research は、市場調査、顧客の現状調査、競合調査、技術情報の調査などに利用できます。

最近のアップデートでは、インフォグラフィックの生成などが可能になりました。指示したトピックに関する図表を含む HTML が生成され、多くのデータや複雑な概念を視覚的に分かりやすく提示することできます。

Gemini の Deep Research で作成したインフォグラフィック

NotebookLM

NotebookLM とは

NotebookLM は、アップロードしたドキュメントに基づいて質問応答や要約、アイデア生成ができる AI ノートブックです。G-gen では、個人のナレッジ整理や情報収集に利用されています。

NotebookLM

Google Workspace のほとんどのエディションには、無償版の NotebookLM と比較して各種制限が緩和されたり、組織的な機能が追加された NotebookLM in Pro が付帯しています。

個人ドキュメントの整理・要約

複数のドキュメントや Web サイト、PDF 資料などを NotebookLM にアップロードし、特定のテーマに関する情報を横断的に検索したり、全体像を要約させたりします。これにより、散在していた知識を効率的に整理できます。

NotebookLM を使うと情報ソースを固定化して生成を行うことができるため、ハルシネーション(AI が事実と異なる内容を生成すること)も低減できます。

またマインドマップ機能を使うと、ドキュメントがマインドマップ形式で整理されます。議事録や技術ドキュメントを構造化して理解するのに役立ちます。

NotebookLM のマインドマップ

ポッドキャスト風音声の生成

NotebookLM では、日本語でポッドキャスト風音声を生成させることができます。アップロードしたデータソースについて、2人の話者がラジオやポッドキャストで対談しているような音声を、数分で生成できます。

「高校生でもわかりやすいように解説」などの指示を与えることで、語彙や論調をコントロールし、例えば英語の論文をアップロードして解説させることで、内容の把握に役立ちます。

FAQ 作成

特定の製品マニュアルや社内規定などをアップロードし、それに関する想定問答集(FAQ)を生成させるといった利用方法もあります。

Google Meet

Google Meet と Gemini

Google Meet は、オンラインでのビデオ会議やウェビナー開催に利用されるツールです。

Google Meet において Gemini は、自動的な議事録作成や、Web 会議体験の向上に役立ちます。また、バーチャル背景の生成や、カメラ映像の画質向上、同じ部屋から複数人が Meet に参加しているときのハウリング防止など、ウェブ会議の質を向上させるための複数の AI 機能が利用可能です。

発言内容の文字起こし

Google Meet では、日本語で行われた会議を文字起こしすることができます。

文字起こしした内容は Google ドキュメントに書き出されます。そのままだと、いわゆるフィラー(「えーと」「あのー」など)も文字起こしされてしまいますが、この内容を先述の Gemini アプリの Gems などで整形することで、体裁を保った議事録を簡単に作成することができます。

会議の要約とアクションアイテム抽出

Gemini は会議の会話内容を分析し、要約を自動生成したり、決定事項や担当者などのアクションアイテムを抽出したりできます。これにより、会議に参加できなかったメンバーが内容を素早く把握したり、議事録作成の手間を削減したりするのに役立ちます。

Google ドキュメント

Google ドキュメントと Gemini

Google ドキュメントは、議事録、企画案、メモ、ブログ記事の下書きなど、G-gen の業務における中心的なドキュメント作成ツールです。

Google ドキュメントにおいて、Gemini はドキュメント作成の様々なフェーズで利用されています。

文章の生成・修正

画面右側の Gemini サイドパネルを利用して、文章のアイデア出し、構成案の作成、表現の洗練などを行います。このサイドパネルは、ドキュメントを開いたまま Gemini の機能(要約、ブレインストーミング、文章作成支援など)を呼び出せるインターフェースです。

例えば、新しいサービスの概要説明文を作成する際に、箇条書きで要点を入力して Gemini に指示するだけで、自然な文章を生成させることができます。

Gemini サイドパネル

また、既存の文章を選択し、「より簡潔に」「より詳細に」「より丁寧に」といった指示を与えることで、文章のトーンを調整することも可能です。ドキュメント上で該当のテキストをマウスで選択し、表示される鉛筆マークをクリックして表示されるメニューから、修正方法を選択します。

Gemini による文章の校正

修正後の文言に対してさらに指示を与えて好みの文章に整えた後、またドキュメントに挿入できます。

ドキュメントの要約

長文のドキュメントを読む時間を短縮するため、Gemini サイドパネルの要約(概要生成)機能が利用されています。特に、他のメンバーが作成したドキュメントの内容を素早く把握したい場合や、過去の議事録から重要な決定事項を確認したい場合に有効です。

Gemini によるドキュメントの概要説明

長大な英語の契約書や利用規約などを日本語で要約させることも可能です。テキスト形式であれば、PDF も対象にできます。

英語の規約や契約書を日本語で要約

Gmail

Gmail と Gemini

Gmail は、Google Workspace に組み込まれたメール機能です。G-gen では、顧客やパートナーとの主要なコミュニケーション手段として利用されています。ここでも、Gemini はメール作成の効率化と品質向上に貢献しています。

メールの下書き作成

メール作成画面で Gemini アイコンをクリックして Gemini サイドパネルを開き、簡単な指示(例:「〇〇社 △△様へ、□□の件に関する打ち合わせのお礼と、決定事項の確認メールを作成」)を与えるだけで、メールの草案を生成できます。これにより、定型的なメール作成にかかる時間を大幅に削減できます。

文章の推敲

作成したメール本文を選択し、Gemini に表現の改善や誤字脱字のチェックを依頼します。特に、重要な顧客へのメール送信前には、より丁寧で正確な表現にするために Gemini を利用する場面が多く見られます。

予定の作成

先方からのメールに書いてあるミーティング予定の日付を抽出して、Google カレンダーの予定を作成することができます。

Gmail からカレンダーを作成

和英・英和翻訳

海外の相手とメールのやりとりをする際、英語を日本語に、あるいは自分の書いた日本語を英語に翻訳することができます。英語のネイティブ話者から読んでも失礼にならず、自然な英語になるように推敲させることも可能です。

Gmail における和英・英和翻訳

Google スライド

Google スライドと Gemini

Google スライドは、プレゼンテーション資料作成に利用されます。Google スライドにおいて Gemini は、コンテンツ作成の補助や、画像など視覚要素の生成に役立ちます。

画像生成

Gemini の画像生成機能を利用して、スライドに適したオリジナルの画像を生成します。例えば、LT(ライトニングトーク)のタイトルスライドや、特定のコンセプトを視覚的に表現したい場合に、「〇〇をイメージした抽象的な背景画像」「△△をしているキャラクター」といった指示で画像を生成し、資料の品質を高めます。

画像の生成

テキストコンテンツの草案作成

スライドの各ページで伝えたい内容の要点を Gemini に指示し、説明文や箇条書きの草案を作成させます。これにより、資料作成の初期段階での時間短縮につながります。

Google ドキュメントなどと同じように、箇条書きの要点を伝えるだけでスライドの文章を生成させたり、元となる Google ドキュメントを指定することで、文章を作成させることもできます。

スピーカーノートの作成

スピーカーノート(トークスクリプト。話すときの台本)の生成にも、Gemini が利用できます。Google スライドの Gemini サイドパネルに生成させることもできますし、Gemini アプリで Google スライドを指定して、ノートを作成させることもできます。

スピーカーノートを Gemini アプリに生成させる

Google スプレッドシート

Google スプレッドシートと Gemini

Google スプレッドシートは、表計算やデータ管理に広く利用されるツールです。G-gen では、見積もりの作成、WBS、社員名簿など、さまざまな情報の整理にスプレッドシートを使っています。

Google スプレッドシートにおいて Gemini は、表の構成案作成、テンプレート生成、データ整理のアイデア出しなどを通じて、作業の効率化を支援します。

テンプレートの作成や関数の生成

Gemini に目的を伝えることで、特定の用途に合わせたスプレッドシートのテンプレートを作成させることができます。例えば、「プロジェクト計画用のガントチャート」「イベントの予算管理表」といった指示で、基本的な表の構造や項目を含んだテンプレートを生成し、シート作成の手間を省きます。

また、Gemini サイドパネルで、自然言語の指示に基づいて関数を生成できます。Gemini サイドパネルを使えば、複雑な関数も容易に生成可能です。

データ整理と分析のアイデア出し

既存のデータやこれから扱いたいデータについて、どのように整理・分析すればよいか Gemini に相談できます。「この売上データをどのように分析すれば傾向が掴めるか?」「顧客リストをセグメント分けするアイデアは?」といった質問を通じて、データ活用のヒントを得ることができます。

また、表の近くに「このデータを分析」ボタンが表示され、クリックするだけでデータから得られる示唆を生成したり、チャート(図表)を生成したりできます。

「このデータを分析」ボタン

出力された分析結果

Gemini Code Assist

Gemini Code Assist とは

Gemini Code Assist は、コーディングを補助したり、自然言語による対話に基づいてソースコードを生成したりするソリューションです。開発業務においては、Gemini Code Assist がコーディングの高速化と品質向上に貢献しています。

Gemini Code Assist には無償版が存在するほか、有償版は、Google Cloud の請求先アカウントに紐づける形で、Google Cloud コンソールから簡単にライセンスを購入できます。オフラインオーダー(書面での申し込み等)は不要です。料金は、Google Cloud 料金と一緒に請求されます。

コード生成・補完

IDE(統合開発環境)内で、コメントや既存コードに基づいて、必要なコードスニペットを生成・補完させます。定型的なコードや、あまり慣れていない言語・ライブラリを使用する際の開発効率が大幅に向上します。

コメントでプロンプトを与えてコードを生成

コードの説明・レビュー

既存のコードブロックを選択し、その処理内容を自然言語で説明させたり、潜在的なバグや改善点を指摘させたりします。コードレビューの補助や、他者が作成したコードの理解促進に役立ちます。

チャットで Gemini に指示を与えてコードを説明

コードレポジトリとの連携

Gemini Code Assist と GitHub、GitLab などのレポジトリを連携させることで、既存のソースコード群を踏まえたコーディングスタイルや、独自ライブラリ、非公開 API などを踏まえたコード生成が可能です。

Generative AI on Vertex AI

Vertex AI と Gemini

ここまで紹介したのは、Google が提供する AI ソリューションの活用事例でした。これらのソリューションには Gemini が組み込まれており、ユーザーは開発を一切行うことなく、AI サービスを利用できます。

しかし、Google Cloud の AI 開発プラットフォームである Vertex AI を使うと、Gemini を API 経由で呼び出して、ユーザー独自のアプリを開発することもできます。

議事録作成を効率化

以下の記事では、G-gen のエンジニアが独自のチャットボットを開発し、Google Meet の自動文字起こし機能と組み合わせて、議事録作成を効率化した事例が紹介されています。

blog.g-gen.co.jp

同様の機能は Gemini アプリでも実現できますが、独自アプリを開発し、API 経由で Google の AI モデルを利用することで、音声の読み上げなど追加の機能を実装しています。

技術サポート窓口やブログ記事のナレッジ活用

G-gen では、Google Cloud・Google Workspace 請求代行サービスに付帯して、無償の技術サポート窓口を提供しています。また、エンジニアは案件で得た知見を G-gen Tech Blog の記事として一般に公開しています。

エンジニアが技術的な問題に直面したり、営業担当者が顧客から質問を受けた時は、過去に対応したサポートケースやブログ記事の検索を行いますが、文字列一致では検索にコツが必要でした。

これを解消するため、G-gen では社内検索システム「G-gen Tech Search」を開発しました。Gemini を使って過去のサポートケースやブログ記事を構造化し、BigQuery テーブルに格納します。さらに、AI Applications(旧称 Vertex AI Agent Builder)の1機能である Vertex AI Search を使い、簡易的な検索 UI を作成することで、文字列一致の検索ではなく、セマンティック検索(意味論検索)で過去のナレッジにアクセスできるようにしました。

社内向け検索ツール

社内向け検索ツールのアーキテクチャ

Slack チャットボット

社内で日常のコミュニケーションに利用しているチャットツール Slack から、bot を呼び出して前述の G-gen Tech Search での検索ができるようにしました。Slack で質問を投げると、bot が過去ケースやブログ記事を検索し、要約した回答と関連リンクを返答します。

Slack bot 経由での利用

また、過去ケースや記事検索に留まらないより汎用的な AI ボットとして、キャラクター性を持たせた Slack bot に気軽に相談できるようにもなっています。過去情報に基づいた一問一答的な質問は G-gen Tech Search bot に投げ、それに留まらないより一般的な質問はキャラクター bot に、という使い分けです。G-gen Tech Search bot のバックエンドは Vertex AI Search、キャラクター bot のバックエンドは Gemini API となっています。

キャラクター性を持たせた bot

最新技術アップデートの要約

Google Cloud では、毎日のように機能アップデートが公開されています。アップデート情報はリリースノートページで公開されているほか、BigQuery のパブリックデータセット(誰でもアクセス可能なデータセット)として構造化データ化されて公開されています。

G-gen は Google Cloud 専業のインテグレーターとして、これらの情報にいち早くキャッチアップする必要があります。

G-gen では、アップデート情報が公開されたらすぐ生成 AI によりこれらの情報を要約させ、Slack に投稿されるようになっています。また G-gen Tech Blog の関連記事もセマンティック検索でリストアップされます。これにより、過去の記事をできるだけ最新化することに役立ちます。

Slack にアップデートの要約情報や関連記事が自動投稿される

この仕組みは、バックエンドに Cloud Run(フルマネージドのコンテナサービス)を使っており、Cloud Run 上のプログラムから Vertex AI 経由で Gemini API を呼び出したり、Vertex AI Search を呼び出したりすることで実現されています。

杉村 勇馬 (記事一覧)

執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長

元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 認定資格および Google Cloud 認定資格はすべて取得。X(旧 Twitter)では Google Cloud や Google Workspace のアップデート情報をつぶやいています。