クラウド料金の見積もり方法を解説!

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G-gen の杉村です。当記事では Google Cloud(旧称 GCP)をベースに、クラウド料金の見積もり方法・試算方法を徹底解説します。

はじめに

当記事では Google Cloud(旧称 GCP)をベースに、クラウド料金の見積もり方法(試算方法)を徹底解説します。

なおこの記事で「クラウド料金」とは Google Cloud、Amazon Web Services、Microsoft Azure のようなメガ・パブリッククラウドを指すものとします。この記事では Google Cloud を例にとって解説しますが、他のクラウドでもベースとなる考え方は同じです。

まず最初に「従量課金であること」「原則的には月次で請求されること」「毎月変動する可能性があること」という最も基本的な性質を理解していただきます。

その後、具体的な試算方法を解説します。

最後に、コスト効率よくクラウドを使うための割引の仕組みについてご紹介します。

3つの性質

1. 従量課金

クラウドは利用時間や利用ボリュームに応じた従量課金が原則です。使った分だけを支払う、と言い換えることもでき、英語では Pay as You Go、略して PAYG とも呼ばれます。

オンプレミスではサーバなどの物理機器を購入すると、初期導入時に大きな金額がかかりますが、クラウドでは初期費用がかからないことが一般的です。その代わりサーバを1時間起動したら、1時間分だけの料金が発生します。ですので使わない間はリソースを削除ないしは停止しておけば料金がかからなくなります。

一部にはライセンス数ごとや期間ごとのサブスクリプションなど例外もありますが、多くがこの原則に従うと考えてください。

2. 月次請求

クラウドは月次での請求が一般的です。従量課金によって発生した料金が、毎月末に締められ、月初の数営業日程度で請求金額が確定し、請求されます。

こちらにも一部は例外があります(年間コミットにより割引が発生する契約など)が、ほとんどの場合で月次請求です。

3. 変動する

クラウドでは基本的に、請求額が毎月変動します。例えば4月は30日間のため、720時間である一方、5月は31日間あるため744時間であり、サービス稼働時間が異なるため請求額が異なります。

またネットワーク使用ボリュームなどは毎月細かく変動するため、微妙に請求額が変動することを想定する必要があります。

試算方法

料金ページ

基本的には、パブリッククラウドの利用料は全てインターネットで公開されています。以下のようなページです。

「どの機能を」「どのスペックで」「どのくらいの時間 / ボリュームで利用すると」「いくらになる」のか、全てこの料金ページから読み取ることができます。ただし、ある程度プロダクトの仕様を理解していないと解釈が難しい場合もあります。

例として Google Cloud の Compute Engine だと、マシンタイプ、永続ディスク、そしてネットワーク通信といった意味をある程度理解している必要があります。

また、クラウド利用料金は定価が変わることがあります。常に最新版の Web ページを参照することが重要です。また Google Cloud に関しては、最新の料金体系や単価を知るには英語版のページを参照することが望ましいです(日本語版のページの翻訳が間に合っていない場合があります)。

料金試算ツール

前述のように料金ページを参照して手動計算すると、考慮漏れや計算間違いのリスクがあります。

そのようなときは、公式の料金試算ツールを活用することで、考慮漏れを防ぐことができます。埋めるべき枠を埋めていくことで、料金を算出できます。

Google Cloud Pricing Calculator

リセールパートナーを頼る

後述のように、クラウドの請求代行を行っているリセールパートナーに見積もりを依頼するのも一手です。

リセールパートナーは料金見積もり方法を熟知しているうえ、パートナー特有の割引を受けられる可能性もあります。

当記事を執筆している株式会社G-gen は Google Cloud のリセールパートナーです。また、AWS のリセールパートナーとしては株式会社サーバーワークスなどがあります。

割引

コミットメント制度

プロダクトによっては一定期間のコミットメント(期間を決めた利用確約)を行うことで割引を受けられる料金制度が用意されています。

例えば Google Cloud の仮想サーバ提供サービスである Compute Engine では確約利用割引(CUD、Committed Use Discounts)の仕組みがあり、1年もしくは3年の利用確約を行うことで最大で半額以上の割引を受けることができます。詳細は以下の記事もご参照ください。

blog.g-gen.co.jp

請求代行(リセールパートナー)

各クラウドのリセールパートナーの請求代行(課金代行)サービスを経由してクラウドを利用することで、パートナーが独自に用意している割引制度の恩恵を受けることができます。

例として G-gen の Google Cloud 請求代行サービスでは、5%の利用料金割引を受けられるうえ、無料の技術サポート窓口や「セキュリティスイート」など特典が多数付与されています。

g-gen.co.jp

見積もり手順の例

手計算

Compute Engine を例にして、クラウド料金の見積もりを行う手順をご紹介します。なお当記事中に紹介されている料金単価はすべて、2023年12月現在のものです。

今回は、以下のようなスペックの Compute Engine VM を利用する場合の見積もりをすると仮定します。

  • 4 vCPU
  • 16 GB RAM
  • Windows Server 2022
  • C ドライブ : 100 GB
  • D ドライブ : 200 GB

まず、VM(インスタンス)自体の料金を見積もります。VM には、vCPU と RAM の料金が含まれます。

料金ページ「Compute Engine pricing」を見て、e2-standard-4 (4 vCPU / 16 GB RAM)マシンタイプの Tokyo (asia-northeast1) の時間単価が $0.171928 であることを確かめます。

一年の中には28日ある月、30日ある月、31日ある月とが混在していますが、平均を取るとちょうど730時間ですので、ここではひと月を730時間と仮定して計算します。VM 料金は 0.171928 × 730 = $125.50744 / 月であることが分かります。

Windows Server は有償 OS ですので、プレミアムイメージの料金表を確認します。Windows Server の料金は $0.046 / 時間 / vCPU であることが表示されています。今回は 0.046 × 730 × 4 という計算になり、$134.32 / 月です。

ディスク料金は合計300 GB です。永続ディスクの料金ページ を見ると、最も基本的な永続ディスクである Balanced は東京リージョンでは $0.13 / GB であると表示されています。0.13 × 300 で $39 / 月です。

最後にこれらを合計します。125.50744 + 134.32 + 39 = $298.82744 となり、日本円ではドル円140円換算で約41,836円 / 月です。

なおここでは、Compute Engine VM を起動し続けると自動的に適用される「継続利用割引」は考慮に入れていません(参考)。

また、ネットワーク通信料金も発生します。ネットワーク通信は VM に出入りするパケットのボリュームに応じた従量課金なのですが、事前の見積もりが最も難しい部分でもあります。便宜的に「予算では VM の利用料金に10%をかけた分を見込んでおく」のように簡易的に見積もることもあります。

Calculator

上記のように手計算を行うと、少し手間であることが分かると思います。

公式の Google Cloud Pricing Calculator を利用すると、必要な数字を入力するだけでこのような計算は一瞬で終わることになります。

杉村 勇馬 (記事一覧)

執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長

元警察官という経歴を持つ現 IT エンジニア。クラウド管理・運用やネットワークに知見。AWS 12資格、Google Cloud認定資格11資格。X (旧 Twitter) では Google Cloud や AWS のアップデート情報をつぶやいています。